屍人荘の殺人/今村昌弘/東京創元社

第27回鮎川哲也賞受賞作で2017本格ミステリベスト10などで一位という興味を惹起させる帯につられて、ももクロ有安杏果やインパルス板倉などが 登壇した富士見市PR大使イベントを観覧するために、たまたま立ち寄っていた富士見市のららぽーと富士見で手に取った一冊。

ネタバレ無しでこの小説を語るのは至難の業だ。しかし物語の根幹をなすところもあまり言うのももったいない。
ゆえに煮え切らない表現で絶賛することになるが、とにかく衝撃的で恐ろしく凄味。それでいて疑うのも困難なほど本格探偵小説なのだから圧巻だ。
それでいて変な話だが、某巨人漫画を思い浮かべてしまった。

大学のミステリー愛好会の二人は本格ミステリーを愛する二人。愛好会には二人しかいない。
語り手の俺は新入生だ。関西の大学らしく一回生という表記は関西人には馴染みが深い。先輩は明智という乱歩ファンからすれば一寸注目してしまう名前にして、 キャラとしては似て非なるタイプの変人。ただ面白いキャラクターしている。

この明智だけにとどまらず、全体的に登場人物は数多いが、名前の暗示をハッキリ明示していることも含めてはっきりと書き分けられているのが、本作の小説としても評価を高めている。

タイトルはそのまんまだ。本格ミステリでお馴染みの館物だ。
ただし恐ろしく変則的だ。その変則的なところが本作のタイトルに相応しいのだ。まさにハイブリット。

とにかく本作はいち早く読むことをお勧めする。内容的に映画化とかされるかもしれないが、映画化される時点で本格探偵小説の衝撃の設定がわかってしまうかもしれないからだ。


鮎川哲也探偵小説選/鮎川哲也/論創社

大学の時に鮎川哲也ファンになってから待ち望んでいた「白樺荘事件」を遂に読めるということで歓喜の一冊。
(鮎哲が亡くなるまでは完成を待っていたのは言うまでもないが、今となっては読めるだけで歓喜だ)
しかも60年近くの長らく出版されてなかった「白の恐怖」も読めるのだからたまらない。そもそも「白の恐怖」も初めて読むので感慨深かった。

「白の恐怖」は莫大な遺産相続を巡った真冬の山荘物。一癖も二癖もある途上人物達。犯人当てとしてはわかりやすいが、本作がずっと封印されていたのは正直もったいない。 今からでも広く読まれて欲しい感もあるため、将来的には文庫化にも期待したい。


幻坂/有栖川有栖/角川文庫

お馴染み作家であり、2017年度大阪ほんま本大賞受賞作ということで書店で目立つ位置に積まれていたので、手に取った一冊。
大阪で住んでいながら大坂と呼ばれていたことも良く存じていながら大阪の坂というのをほとんど意識したことが無かったので興味深かったのもある。

天王寺七坂を題材にした怪奇。連作短編集でそれぞれ味わいが全く異なるのが凄みを感じさせる。
実在する天王寺七坂の「清水坂」「愛染坂」「源聖寺坂」「口縄坂」「真言坂」「天神坂」「逢坂」「枯野」「夕日庵」の九編を収録。

「清水坂」は子供の頃の思い出話という内容で、誰もが持つ憧憬と後悔の物語。大阪弁の語りが心地よいが物悲しい。

「愛染坂」は運命の出会いを果たした筈が、運命ゆえに悲しい方向に流れてしまう悲哀。

「源聖寺坂」は館を舞台にしたもっと直截的な幽霊譚。第三者が主役のためか効果は弱いが、変な話だが、もっとも現実味が色濃い怪奇探偵的ではある。

「口縄坂」は猫好きには面白い前半からの不快な後半というアンバランス。あまり効果的な展開ではない。

「真言坂」は死んでしまった恩人がいつまでも幽霊として優しく現れるという話で、物語としてはもっとも幻想的で美しい去り様。ゆえに個人的には本作が最高傑作。

「天神坂」は料理屋を舞台にした作品だが、登場人物が全員普通じゃない。「源聖寺坂」に出てくる心霊専門探偵が出てくるが、こちらの方が本書には相応しい幻想的な怪奇譚。

「逢坂」は小劇場の舞台俳優が主役。幽霊の設定は不思議な安らぎを与えてくれる。俊徳丸の舞台を巡る展開は幻想世界に相応しい。


tag : 有栖川有栖 天王寺七坂 大阪七坂

7人の名探偵(新本格30周年記念アンソロジー)/文芸第三出版部編/講談社ノベルス

綾辻行人のレビュー、つまり新本格ムーブメントが発生して30年を記念したアンソロジー。

タイトルの通り、7人の新本格初期デビュー組作家による豪華すぎる「名探偵」をテーマとした作品集となっている。

ちなみにわしの買った本の栞は麻耶雄嵩だった。

「水曜日と金曜日が嫌い」は麻耶雄嵩のメルカトル鮎もの。サブタイトルの大鏡家殺人事件というのも心憎い。
美袋三条が山で遭難して辿り着いた洋館で発生した殺人事件というオーソドックスのようで、最後まで通して麻耶らしい作品となっている。

「毒饅頭怖い」は山口雅也の作品。落語ミステリ。本作中の独自路線でオチが面白い。

「プロジェクト・シャーロック」は我孫子武丸。本作の最高傑作と勝手に思っている。名探偵かくも進化するかと思いきや。

「船長が死んだ夜」は有栖川有栖。本作品集で一番オーソドックスな本格ミステリといえる安定の火村と有栖川もの。真ん中の配置は非常に正しい。

「あべこべの遺書」は法月綸太郎。こちらも安定の法月父子もので安定のオーソドックス本格もの。乱歩の吸血鬼が引用されている点から推理ロジックまで素晴らしい。

「天才少年の見た夢は」は歌野晶午もの。特殊な状況下における謎が面白い。この配置は狙ったものならばそのつもりなのだろう。

「仮題・ぬえの密室」は綾辻行人。本アンソロジーの掉尾を飾るに相応しい作品。ボーナストラックといっても過言ではないファンサービス作品。
読者にも30年の歴史の重みを思い起こさせるのだからすばらしい。



シャーロック・ホームズ対伊藤博文/松岡圭祐/講談社文庫

司法の独立を守ったことで歴史的意義が大きい有名な大津事件に、まさかホームズが挑む展開に。

もっと巫山戯た内容かと思いきや、伊藤博文との出会いから伊藤の作中の活躍も含めて、 ホームズが非常に歴史に溶け込んだ活躍を魅せてくれるのだから素晴らしい。

こんな大津事件にはじまって、こんな深い陰謀を思い浮かぶところが凄まじい。

ホームズを知る歴史ファンにとってはとんでもない宝物のような長編ミステリー!

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