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悲しくてもユーモアを(文芸人・乾信一郎の自伝的な評伝)/天瀬裕泰/論創社

乾信一郎はワシは知っている作家だと思っていた。実際、翻訳者、編集者、作家、これら3つの顔は一応ながら知っている。
が、しかしよくよく考えてみると、主に新青年での乾信一郎しか知らなかった。
江戸川乱歩や甲賀三郎の同時代作家という認識しかなかったといってもいい。


本書を読むと、乾信一郎の波乱の人生や生き方をそのまま自伝的になぞることができる。
悲しくてもユーモアを。ユーモア探偵作家という認識だったので、このユーモアという部分が後生まで続いた特長というのを 知って感慨深いではないか。


自伝的評伝の書き方も非常に良かった。まるで乾信一郎のその時々の気持ちを読んでるような自然さが合っていた。
いじめられっ子、猫好きという幼年期から小学生時代のエピソードがそのまま晩年まで生き続けているのも 自伝的だからこそ得られる生き様なのではないか。


それにつけてもシアトル生まれとは知らなかったし、一族の有名さ、戦後の放送作家、動物作家としての活躍などは全く知らなかった。
戦中の苦労についても。


江戸川乱歩や甲賀三郎などなどとの絡みはあまりなかったようで、また他の戦前探偵作家との絡みについても あまり触れられていないのが、新青年の乾信一郎に注目していたワシのような偏ったファンとしては、 どうにも少しばかり心淋しく物足りない点は隠しようもないところではあるものの、 基本的に20世紀の100年という乾信一郎の生き様を知る上でも一級資料となるのは間違いない。
単純に時代の流れを知るだけでも、気楽に読める面白い読み物でもあるのが素晴らしい。


最後に目次を軽く載せておこう。

第一章 明治大正は走馬灯
第二章 昭和戦前は波瀾万丈
第三章 昭和戦後の華やかなカムバック
第四章 ヒロシマ―祈りと出版
第五章 経済の高度成長期には
第六章 昭和後期の人脈とイベント
第七章 また改元して平成に


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