家守/歌野晶午/角川文庫

帯に「家に渦まく人間の思惑は奇怪な事件を作り出す」と書かれている通りの本格ミステリ短編集。

「人形師の家で」「家守」「埴生の宿」「鄙」「転居先不明」の5編を収録している。
やはり表題作の「家守」を筆頭に、表の事件、裏の事件、双方の絡み合いの収束がもたらす真実に愕然としてしまう作品群となっている。


「人形師の家」はギリシャ神話のピグマリオンによる人形愛の話から始まり、それを現実化させようとする男の話。 そして両親が殺人事件でいなくなった男の少年時代から現在の話。人形愛する男の二十面相の隠れ家のような洋館における少年時代の友人失踪事件も含めて、複数の話がリンクする話の融合が素晴らしい。まさかの着地点という真相には驚くしかないだろう。


「家守」はオーソドックスな本格ミステリからすれば、至高のアリバイ&密室殺人物と言える。妻が朝起きたら窒息死していたという事件。 家自体が完全密室だったため自殺と思われたが、旦那があからさまに怪しいという展開。オーソドックスだからこそ素晴らしい。完全犯罪物だ。 なおかつそれだけにとどまらないところが凄い。ハムスター殺害事件とのリンク、道路拡張の立ち退きを退ける真の理由という過去の事件とのリンク


「埴生の宿」は認知症老人が家族を家族と認識できないという描写で始まる。そこでそっくりさんを高額バイトで雇い、 埴生の宿にて、老人に対して本当の家族が帰ってきたかのような幻想をみせようとするが、という展開。 少ない登場人物、それぞれの視点の移り変わりは見事だろう。事件としてはもっとも単純かもしれないが、非常に深い。


「鄙」はど田舎に訪れた官能小説家の兄と雑用係の弟の話。そこには二つの名字しか存在せず、運命共同体の村落だった。 例外的に医者のみが外部の人間と言った体だ。そこに東京からやってきた兄弟と10年ぶりの里帰りした村出身の男だった。 殺人事件そのものは単純だが、背景を含めた欺瞞が面白い作品だ。


「転居先不明」はもっともコメディチックな作品だが、笑って良いものやらなかなか難しい。 妻は視線を感じてストーカーではないかと夫に訴えかけるという流れから、格安物件は訳あり物件であり、実は殺人事件の舞台だったという 展開にまで発展するが。。。作中語られる殺人事件の二転三転の凄惨さに比べると、実際は平和なのだが、果たして本当にそうか?
プロバビリティの犯罪という言葉が出てくるところは興味を引く。


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