金田一耕助VS明智小五郎ふたたび/芦辺拓/角川文庫

パスティーシュを再び書いてくれていたのか。という思い出の作品の続編。中短編集である。

明智小五郎贔屓としてみては、いまいち魅力的に描き切れていないのだが、まぁ、それも仕方がないのだろう。 描かれた時代が戦中戦後すぐとあって、新鋭若手で成長真っ盛りの金田一耕助に対して、すでに老練な明智小五郎であるのだから。

微妙に表題作と異なる「明智小五郎対金田一耕助ふたたび」は、終戦を告げる玉音放送を一般日本人同様に戦争に否が応でも巻き込まれることになったが生き残った金田一耕助と明智小五郎のシーンから始まる。
話は戦後の華族解体に伴う悲劇的な没落華族名家柳條家の兄弟姉妹を巡った事件。金田一耕助は事件発生前に別件で探偵の依頼を受けるなど表だって巻き込まれ、明智は絶命間近に電話で呼び出されるといった展開だった。
金田一、明智両者を立てつつなのだが、どうにも明智小五郎の性格描写が気にくわない。文代さんと小林少年で何とか中和しているといった有様か。
事件の解決までは本格探偵小説であり、意外な犯人と意外な事実が、しかし自然な流れで表出する。

短編の「金田一耕助meets ミスターモト」。元ネタのミスターモトを知らなかったので、金田一耕助の単なるパスティーシュとして楽しむことしか出来なかったのだが、米国から神戸に帰国する際の客船で金田一耕助が巻き込まれた事件。

中編「探偵魔都に集う―明智小五郎対金田一耕助」は米英戦直前の上海の共同租界を舞台にしたもの。上海でいわば軍の犬として活動していた明智小五郎が出てくる点は面白い。戦場で負傷し上海の病院に滞在していた金田一耕助が探偵趣味から上官と仲良くなり、上海の町へ忍びで遊びに行った際に発生した殺人事件を巡って、金田一耕助と明智小五郎が探偵として推理を出し合うが、時代の中でどのような展開を見せたか。

短編「物語を継ぐもの」は、シニカルのようでいて、物語の連続性を生かし続けるための流れとして若い女の子を用いるのは必然の流れということを示したもの? おっさんや少年が共感を得て活躍するのは難しい時代、ファンタジー性も含めて女の子が主役を張る時代になってしまったということか

短編「瞳の中の女異聞―森江春策からのオマージュ」は金田一耕助ものの未解決事件「瞳の中の女」を取り上げた佳作。森江春策という自身の探偵キャラと金田一耕助を邂逅させるところも、本短編集が単なるパスティーシュに終わらせていない。

作者の解説が非常に助かる一書である。解説がないと理解が深まらないのかといわれるとそれまでだが、作品に対する思い入れを即時に読めるのは非常に嬉しいことと言えるだろう。久々の金田一耕助VS明智小五郎には満足。ドラマは見なかったけどね。

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