魚舟・獣舟/上田早夕里/光文社文庫

短編の「魚舟・獣舟」、「くさびらの道」「饗応」「真朱の街」「ブルーグラス」および、中編の「小鳥の墓」を収録。

「魚舟・獣舟」は先に「華竜の宮」を読んでいたので知っていたが、この想像力は賞賛に値する。子供の頃の罪を背負う海上民とその異形の兄弟、生きるための進化の果てにあるものは?

「くさびらの道」はサイエンスフィクションというよりもサイエンスホラーだ。死よりも恐ろしいのか、それとも進化なのか? 寄生茸に身体を食い尽くされ、死ぬしかない不治の病。しかもなぜか生者には幽霊を見せるという。永遠の夢想を描く幻想小説としても読める。至高の絶品作という冠を与えることに躊躇はない。

「饗応」は著者の作品に度々出てくる人口知性体の悲哀。ショートショート。

「真朱の街」は人が進化し異形の存在をなったために、妖怪が表に姿を現すようになったという世界を描く異色の妖怪SF。百目などお馴染みの妖怪が登場する。人は妖怪にすらなり得るということを示唆する。

「ブルーグラス」は音によって成長する人口オブジェを巡る過去との邂逅と決別。本書で唯一恐怖や戦慄のホラー感の無い作品。

「小鳥の墓」は死という救済を求める女を次から次へと殺害し続けた男の少年時代の回想録。情報や治安を統制し理想の人間を作り上げる実験都市の描写も素晴らしい。誰もが羨む理想都市とは裏腹に、理想の上を行く人材が求められているというのもシニカルだし、結局主人公のたどり着いた先は更にシニカルだった。
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