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君がいなくても平気/石持浅海/光文社文庫

本屋で適当に適切なサイズの本格ミステリ系統に属する文庫本を選択する場合、基本的に何冊か読んだ作家の作品を選ぶということになる。
その中でも最近―といっても10年以内という意味だが―デビューした作家についてはよくわからないため、この石持浅海が候補に浮上することになる。新刊コーナーで目立っていれば尚更だ。

「恋人が殺人者と気づいてしまう」というのがテーマであり、今まで読んだ石持作品とは大きく赴きが異なりそうという点から一瞬、他の石持作品にしようかとも迷ったが、結局は本書を購入に踏み切った。


新進のIT企業と老舗の赤ん坊用品メーカーが提携して、千葉市幕張の開発センターで、携帯電話を使った赤ん坊用商品の企画設計から製造までの開発全般を、主人公と恋人を含むメンバー6人が行っていた。
その第1弾製品が大ヒットしたため、平日に祝勝会を行ったのだが、物語の冒頭、祝勝会の翌日の朝に事件が発生する。開発チームのリーダーが急死したのである。原因はニコチン中毒によるという。

主人公が真に狼狽したのはその後、煙草と縁がない恋人の部屋で煙草購入のレシートを発見したからであり、その主人公が殺人者の恋人でありたくない、別れるべきだと内なる打算を考え始めるという展開。



率直に言えば、これが本格ミステリとは言い難いような構成で、サスペンス色が強い。
むろん抜かりのない伏線が示す動機や犯行手段の点では本格物らしい緻密さはあるものの、内なる心と実際の行動とに乖離が認められる不可思議な心理状況におけるサスペンスとしての風味の方が強いだろう。


同業者から言わせれば、動機となった原因については疑問だ。このプロジェクトは全く管理がなっていないというしかない。制御系システム開発者なら有り得ない話である。しかも自社開発で柔軟なスケジュールを立てやすいにも関わらずだ。(部長が無能というのが、これを誤魔化す伏線だとしても酷すぎる)

しかし同時に少なからぬコンシューマー向け製品の製造に携わる者ならば、ちょっと恐くもなったのではないだろうか。この作品に限らず、実際に有り得る話だからだ。そこにはリアリティは感じられるし、ニコチン毒についても同様だ。


いずれにせよ、主人公は打算とエゴに満ち満ちた男に過ぎないが、その主人公が殺人者と強く疑う恋人に対して、どのような行動を取ったか。首尾良く別れることが出来たのか。そもそも犯行の動機は何なのか? そして開発チームの運命は? 様々な疑問がサスペンス的な作風と相まって、一気に読ませる小説であることには違いない。



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