柘榴病/瀬下耽
柘榴病/瀬下耽
瀬下耽、「新青年」昭和2年10月号に発表の第二短篇。
太平洋上で渇水に喘ぐ船員が見つけた島。そこは恐るべき柘榴病に汚染されていたのだ。残されたその島最後の生物になった医者の手記。悪魔の貪欲さが生んだ完全崩壊。完全治療方法を突き止めながら、富に眼の眩んだ彼と妻は無人島の王様になりたかったのだ。呪いを吐き滅び行く島民、全生物。その具現化が嵐の日の蝙蝠だったやも知れぬ、死の使い。ああっ、しかし何という怪しき幻魔の妙なことよ。
なお現在光文社文庫「江戸川乱歩と十三人の新青年 文学派編」等で読める。
(2001/11/22初稿[妖鳥の涙])
新青年復刻版読了時の感想
怪奇探偵小説の秀作だ。柘榴病という世にも恐ろしい死の病を治す術を得た医師の懴悔話。人はここまで狂気的な貪欲者になれるというのか!?
掲載誌:新青年 昭和二年第十二号(十月号)[創作翻訳傑作集]=一冊六十銭(2001/5/11読了)
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テーマ : ネタバレ無し探偵小説
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