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夢みる葦笛/上田早夕里/光文社文庫

SFと怪奇の短編集。一作読むたびに作者上田早夕里の天才ぶりを賞賛したくなるほどであった。

「夢みる葦笛」はSF系の怪奇幻想もので、町に突然現れるようになった不気味なイソギンチャクのような音楽を奏でる生命体の話。人の進化の果てなのか、否か。
「眼神」は怪談に近い怪奇幻想もので、憑き物を宿し託宣をする役割を担うことになった兄のような従弟の話。想像の域とは言え、手紙が救いであった
「完全なる脳髄」はSFで、「華竜の宮」でお馴染みの人工知性体と思いきや、必ずしもそうではない知性体が完全なる脳髄を目指すという、それでもやはり人工知能が夢みる話のように思えた。
駆け足になるが、「氷波」に出てくる人工知性体はひと味違う土星で活躍するもので、前提的に異形であり、「滑車の地」では「華竜の宮」の世界のように海面が上がった世界で、更にディストピアと言える世界なのだが、そこでは異形の物が希望となる。「楽園」の示すAIは現在のAIの延長に近いが恐るべき未来を示唆していた。
歴史好きにとって恐るべきだったのが「上海フランス租界祁斉路三二〇号」。とにかくどの作品も素晴らしい。
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