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偽視界/星田三平

「ぷろふいる」昭和9年10月号掲載の短編。

星田三平が発表した最後の作品と目される作品。そして最後にして最高傑作といっても過言ではなく、特徴を遺憾なく発揮したSF探偵小説となっている。

視神経に流れる電流に似せた疑似電流によって、見える偽視界、親友の峯川博士の研究成果だ。しかしなぜかその偽視界に映るものは決まって女の顔なのである。 峯川も主人公もその顔に恋を感じるというのだから不可思議な展開だが、峯川には偽視界の研究の最中に見いだした女が別にいる。そして起こった冒頭で述べられるような峯川の完全犯罪と偽視界の秘密とはいかなるものだったか。

それにつけても、この作家はやはりSFの先駆者としてこそ大きな足跡を残していたのだとはっきりわかるではないか。本編しかり、処女作の「せんとらる地球市建設記録」しかり。時代が理解に追いつかなかったことこそ不運だったとしか思えぬのである。

なお本作についても、他の星田作品と同様に論創社「戦前探偵小説四人集」で読むことが可能となっている。

テーマ : ネタバレ無し探偵小説
ジャンル : 小説・文学

米国の戦慄/星田三平

「ギヤング」昭和8年1月号掲載の短編。

米国を舞台にした探偵小説とは言い難いコント風の作品。世紀のアヘン王として知られるアルカポネを見た、という噂が広がるところから 話は始まる。しかしアルカポネは監獄にいるはずなのだ。しかし噂は止むどころか広がるばかりだった。 そこで登場したのがヴァン・ダインの生み出した名探偵ファイロ・ヴァンスというのだから、この作品のパロディぶりかわかるというもの。

ストーリーはアルカポネとヴァンスのニューヨークを巡る文字通りの決死の戦いに発展するスリリングな展開となっており、 政治思想も交えた予期せぬプロットには、思わず苦笑してしまうこと間違いなし。

なお本作についても、他の星田作品と同様に論創社「戦前探偵小説四人集」で読むことが可能となっている。

テーマ : ネタバレ無し探偵小説
ジャンル : 小説・文学

落下傘嬢殺害事件/星田三平

「新青年」昭和6年12月号発表の作品。

危険だが高収入という魅力のパラシュートガールという職業がある。しかしその危険が現実のものになってしまう。
パラシュートの紐が空中で切れてしまったのである。ところが捜査の結果、事故ではなくNという鋏で切断した疑いが出てきた。
被害者の婚約者に疑いが向けられるが、事件の真相は意外な方向へと二転三転と変化していく。

恋愛心理の複雑さが本作品の大きな特徴となっている。良く見られる入れ替えについても、単純な誤りというだけに片付けていないところも高評価だ。

なお本作についても、他の星田作品と同様に論創社「戦前探偵小説四人集」で読むことが可能となっている。
以下は「妖鳥の涙」執筆時の感想。

落下傘嬢殺害事件/星田三平

星田三平の本格短篇で「新青年」昭和6年12月号発表。
恋愛心理が複雑に絡み合って起きた落下傘嬢の悲劇。因みにパラシュートガールと読む。墜落死への作為の香り、それは自殺か他殺か。ナイフに残されたイニシャルNの秘密。そのイニシャルの裏に隠された意思。間違えた落下傘。全ての秘密は映画が語っていると思われたが……。単なる本格物で終われば内容からしてもそれ程ではなかったが、警部補の推理を超越する意外な心理がグンと引き立っているのが本篇なのだ。
なお現在、手軽に読める本がないのが惜しまれる所だ。
(2001/12/01初稿[妖鳥の涙])






以下は「新青年」復刻版の読了時の感想。

「落下傘孃[パラシュートガール]殺害事件」/星田三平/20ページ
パラシュートの紐が切れて、うら若き命が失われた。この殺人事件は意外に複雑な動機の上で構成されていてなかなかの面白さと言える。

掲載誌:新青年 昭和六年十二月号
(2001/8/7読了)

テーマ : ネタバレ無し探偵小説
ジャンル : 小説・文学

せんとらる地球市建設記録/星田三平

「新青年」昭和5年8月増刊号発表の作品。星田三平の処女作である。

この時期の作品として異例とも言えるSF先駆作である。漂流者となった主人公の星田は友人と、余所の幼子とともに生命からがら千葉の陸地までたどり着いた。 ところが近くの集落の人々は一人残らず死に絶えていたのである。 その後、生きている町や人を探して、東京を目指すが、いずれも死の町であり、野生化し猛獣と化した犬が恐怖をもたらすだけだったのだ。 果たして主人公達には絶望しかないのだろうか?

探偵小説といえない当時は国内には存在しないSF作品という点では素晴らしいの一言しかない。最後に死の町と化した原因についても説明があり、そこが探偵小説的な謎の解決となっている。ただ中編の分量で後編まで書こうとした割には、中盤のストーリーの意味合いが薄く、ほぼ前半と最終盤だけでも内容を理解するに足る展開となっていることは惜しい点と言える。

なお本作についても、他の星田作品と同様に論創社「戦前探偵小説四人集」で読むことが可能となっている。




以下は「妖鳥の涙」執筆時の感想。

せんとらる地球市建設記録/星田三平

星田三平の処女作で、「新青年」昭和5年夏季増刊に掲載の中篇
怪奇SFテーマで面白さを勝ち取っていると云える佳作だ。漂流者達は、どうにかこうにか再上陸を果たす事が出来た。しかしその眼に飛び込んできたのは異様な町並み、死体ばかりの死の街なのだ。高まる不安を背負いつつも、帝都に向かうが、魔の犬が徘徊するだけの死体の山という絶望という二文字が相応しい展開だったのだ。さて如何にこの情況を脱却しただろうか!? 
なお現在、読める本がないというのが残念な所である。(昔は「新青年ミステリ倶楽部」等で読めたのだが、、)
(2002/4/10初稿[妖鳥の涙])






以下は「新青年」復刻版の読了時の感想。

「せんとらる地球市建設記録」/星田三平/40ページ

当選小説第三等。恐るべきSFでかなり面白い。
漂流から何とか陸地へ戻ってきた主人公たちは死んだ町を見ることになり、東京でも人の死体ばかりという死の町の恐怖を描いたSF。
探偵小説的要素はほとんど無く、中盤にぎこちなさもあるような気がするが、なにより怪奇SFテーマで面白さを勝ち取っていると云える。もしこれに意外性のトリックがあれば、圧倒的秀作になったとは思うので少し探偵小説にして頂きたく思った。まぁ、中途半端になる恐れの方が高いという説もあるが。
掲載誌:新青年 昭和五年夏季増刊(第十一号)=一冊壱円
(2001/7/4読了)

テーマ : ネタバレ無し探偵小説
ジャンル : 小説・文学

エル・ベチヨオ/星田三平

「新青年」昭和7年9月号発表の作品。

軽妙なタッチで描かれたが本作である。 主人公の龍さんは偶然の散歩コースから、屋敷の令嬢から突然人違いをされ恋文を託されてしまい、結果的に事件の渦中に巻き込まれていく。 誤解を解くために屋敷に向かうと令嬢の父親は拳銃をぶっ放し、エル・ベチョオの陰に怯えるばかり。そして遂には死と相成ったのだ。 その影につきまとう謎の男の存在、そしてエル・ベチョオとは一体なんなのか?

なお本作についても、他の星田作品と同様に論創社「戦前探偵小説四人集」で読むことが可能となっている。
以下は「妖鳥の涙」執筆時の感想。

エル・ベチョオ/星田三平

星田三平、「新青年」昭和7年9月号掲載の短篇。
ユニークなタッチで描かれた作品が本篇だ。主人公の龍さんは偶然の散歩コースから、突然人違いをされ、事件の渦中に巻き込まれていくのである。少女の父親は拳銃をぶっ放し、エル・ベチョオの陰に怯えるばかり。そして遂には死と相成ったのだ。この秘密は、エル・ベチョオに繋がるというのだろうか? それともこれも単なる偶然だったというのだろうか!? さて。
なお現在読める本がない。以前は角川ホラー文庫の新青年傑作選「ひとりで夜読むな」で読む事が可能だったのだが。
(2002/11/18初稿[妖鳥の涙])







以下は「新青年」復刻版の読了時の感想。

「エル・ベチョオ」/星田三平/18ページ

偶然の勘違いから巻き込まれた主人公の龍さんがエル・ベチョオに取り憑かれた屋敷の父親の死などの謎を如何に処理するか・・・!? 一応本格物だろう。そして蚊の真実とは!

掲載誌:新青年 昭和七年九月号
(2001/9/25読了)

テーマ : ネタバレ無し探偵小説
ジャンル : 小説・文学

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