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葛山二郎探偵小説選/論創社

名作「赤いペンキを買った女」「影に聴く瞳」「霧の夜道」「骨」など葛山二郎が世に出した全ての作品を集成した1冊。
大正十二年に『新趣味』で「噂と真相」で懸賞デビュー後、昭和二年に改めて『新青年』から「股から覗く」で再デビューを果たしている。
本書はほぼ昭和初期の作品を中心に戦後の数作まで収録したラインナップとなっている。シリーズキャラクターは半分以上の作品に登場する花堂弁護士。

個人的にもっとも気に入った作品を一つあげるとすれば「染められた男」だろうか。
赤いペンキや霧の夜道と類似した著者の得意の展開を見せる。法廷探偵小説の様相を取っており、花堂弁護士の活躍のホームグラウンドではあるが、解題でも触れられているとおり、弁護士が弁護の仕事をしないどころか逆にという展開はさすがにおかしいと突っ込まざるを得ないだろう。

戦前作品は、「新青年 復刻版」にて、在学中にほぼ全て読んだことがある作品だった。ゆえにこのブログにも各編の感想記事は多く残っている。

逆に「花堂氏の再起」「雨雲」「赤鬼」「後家横丁の事件」というわずか四編のみになる戦後作品は全て初読だった。

「花堂氏の再起」は戦後内地に戻ってきた花堂氏の再起話で、いつの間に北枕になっている謎がユーモラスではあるが、神経衰弱とが合いまった戦後直後という時代に翻弄された精神状況も伝わってくる作品。わかりやすい結末が珍しくもある。

「雨雲」は農村で起きた毒を使った連続殺人事件が発生。邪推仕合を花堂弁護士が最後に登場して名探偵然と事件の真相を解き明かす。タイトルの付け方がシンプルisベスト


慈善家名簿/葛山二郎

慈善家名簿/葛山二郎

葛山二郎、「新青年」昭和10年6月号掲載の短篇。
花堂弁護士シリーズだが、全然探偵小説ではないという意味で、奇怪な作品である。花堂氏は旧友に出会うが、名前を思い出せない上に、それが明かに乞食。そのインスピレーションから名前は思い出すが、話し出すに叔父さんの異様な多さ。その芳名録を使った慈善家名簿たるや、乞食の名に恥じぬ美事な作戦と出来で、乞食組合の設立なのだ。と、乞食道にまっしぐらな作品としか言えまい。
なお現在、国書刊行会「股から覗く」で読む事が可能である。
(2003/9/25初稿[妖鳥の涙])


テーマ : ネタバレ無し探偵小説
ジャンル : 小説・文学

古銭鑑賞家の死/葛山二郎

古銭鑑賞家の死/葛山二郎

葛山二郎、「新青年」昭和8年1月号掲載の短篇。
これも花堂弁護士シリーズで、闇のトリック、錯覚の魔術が生きている作品である。崖下に馬ごと落ちて死亡した古銭鑑賞家、それは一時は警察に過失死と決定された。が、その遺族が言うには殺人だというのである。そして珍品中の珍品たる古銭を巡っての疑いを持っている事を花堂氏に吹き込むが…。花堂氏の論理はどちらに向くであろうか!? 
なお現在、国書刊行会「股から覗く」で読む事が可能である。
(2003/9/25初稿[妖鳥の涙])


テーマ : ネタバレ無し探偵小説
ジャンル : 小説・文学

染められた男/葛山二郎

染められた男/葛山二郎

葛山二郎、「新青年」昭和7年10月号掲載の短篇。
法廷探偵小説で、花堂弁護士の論理が冴え渡る。もっとも花堂氏は弁護人としてやってはならない事を犯してしまっているが…。
タクシー運転手は怪我を負いつつも、銃声を聞いて、そして殺害事件を悟った。被害者の夫の被告、昼寝のアリバイはあるも、決定的目撃者はおらず、見られていたのは靴のみ。そこで染められた男、染められた証拠なのだ。
犯罪の奇計が面白い本篇、なお現在、国書刊行会「股から覗く」で読む事が可能である。
(2003/9/25初稿[妖鳥の涙])


テーマ : ネタバレ無し探偵小説
ジャンル : 小説・文学

赧顔の商人/葛山二郎

赧顔の商人/葛山二郎

葛山二郎、「新青年」昭和4年9月号発表の短篇。
列車で人の見送りに出ている間に、物をどけて座っている赤ら顔の男。その男の手が、その先の方の物を離さない物だから、窓に挟まって、物も取り出せない。そういう状況から赤ら顔の男は或る婆さんの強欲話を持ちかける。例え無くとも他人には金持ちに見せよ。という話。その裏には驚くべきデンガエシが待っているのだが。その金庫に纏わる話とはどのような物だったか!? 
感心するほどではないが、現在、国書刊行会「股から覗く」で読む事が出来る。
(2003/9/25初稿[妖鳥の涙])


テーマ : ネタバレ無し探偵小説
ジャンル : 小説・文学

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