天佑/羽志主水

「猟奇」昭和4年5月号掲載の短編。

この時期に日米戦争を予期し、なおかつ資源が無尽蔵な米国に対して、日本が資源欠乏症であり、戦争が長引くにつれて、 倹約でも追いつかないことを予言しているという点で興味深い。
劣勢になった日本人の神頼み思想がシニカルに描かれている点が、羽志主水作品らしいところも注目される。

本作についても、他の羽志4作品同様に論創社「戦前探偵小説四人集」で読むことが可能だ。

テーマ : ネタバレ無し探偵小説
ジャンル : 小説・文学

監獄部屋/羽志主水

「新青年」大正15年3月号発表の短篇。作者の真の意図は不明ながらも、社会問題を取り扱った作品として名高く、探偵小説という枠組みを超えた作品である。

論創社「戦前探偵小説四人集」にも収録されているし、ネット上の青空文庫でも読むことが可能だ。

タコ部屋での強制的な虐待労働を強いられた労働者達にとって天佑が訪れたかに見えた。と言うのも労働状況を調査する査察団の視察が来るというのである。戦々恐々とする中、虐待される側の労働者は視察団に対して窮状を訴えるが・・・。最後のどんでん返しこそ本小説が探偵小説たる唯一の理由なのだが、それは悪魔の所業とも言える現実の恐怖に違いないところが、当時においても探偵小説の枠組みを超えた話題となったのであり、現在でも同様に注目される作品たる所以となっているのだろう。

作者の羽志主水はかつては幸徳秋水のような社会主義者と行動を共にしていただけあり、他にも日本国のあり方に対して、冷ややかな視線を投げかけるといったメッセージ性の高い作品が多いのが特徴となっている。

本作を含む全4作品を論創社「戦前探偵小説四人集」で読むことが可能だ。

テーマ : ネタバレ無し探偵小説
ジャンル : 小説・文学

越後獅子/羽志主水

越後獅子/羽志主水

羽志主水、「新青年」大正15年12月号発表の短篇。
時計が正確な欧米とは異なり、時計が不正確という今では信じられない日本の現状だったが、ラジオの長唄「越後獅子」が決定項になったのである。火事が発生し、焼け跡から、手拭いで首が絞められた女の死体が出るという事件。しかも夫たる男とも頻繁に口喧嘩しており、加えて保険金までかけていたというのだ。こうまで揃って、疑われてしまうのだが、事件の真相とは如何なる物だったか。

論創社「戦前探偵小説四人集」で知ったが、それにしてもアリバイになった長唄が間違えているとは、これは作者が途中で気づけば、実に惜しいアリバイ崩し物になりえたのかもしれないと思うと、何となくもったいなく思ってしまうのはきっと現時点の感想だからだろう。

なお現在、光文社文庫「新青年傑作選」や論創社「戦前探偵小説四人集」等で読む事が可能である。
(2003/9/25初稿[妖鳥の涙])





以下は新青年復刻版を読んだときの感想

「越後獅子」/羽志主水/9ページ

火事の跡から死体が一つ、しかしその死体にの首には手ぬぐいが巻き付いていた、という事件。推理的には面白いものもある。

掲載誌:新青年 大正十五年第十四号(十二月号)=一冊六十銭
(2001/1/18読了)

テーマ : ネタバレ無し探偵小説
ジャンル : 小説・文学

「越後獅子」/羽志主水

「越後獅子」/羽志主水/9ページ

火事の跡から死体が一つ、しかしその死体にの首には手ぬぐいが巻き付いていた、という事件。推理的には面白いものもある。

掲載誌:新青年 大正十五年第十四号(十二月号)=一冊六十銭
(2001/1/18読了)

テーマ : ネタバレ無し探偵小説
ジャンル : 小説・文学

蝿の肢/羽志主水/7ページ

「新青年」大正14年8月号発表の短篇。羽志主水の処女作である。

論創社「戦前探偵小説四人集」にも収録されている。

破滅を迎える前に見限ったとはいえ、一時期は幸徳秋水とも頷けるというものかもしれないが、羽志主水の特徴として、シニカル、日本の発展を遠い目で皮肉るという点がある。
それは処女作の本作からして始まっており、ハエの足とは先進国にあるまじき日本の衛生環境の悪さ、病原体の象徴としてとらえられている。
話は殺人未遂がドイツの国家機密が絡むというもの。



以下は新青年復刻版を読んだときの感想


「蠅の肢」/羽志主水/7ページ

タイトルの蝿の足から犯人の範囲を推理するいうものであるが、どうもやや半端な感は否めないだろう。

掲載誌:新青年 大正十四年第九号(八月号)=一冊五十銭
(2000/11/29読了)

テーマ : ネタバレ無し探偵小説
ジャンル : 小説・文学

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