江戸川乱歩に愛をこめて/ミステリー文学資料館編/光文社文庫
江戸川乱歩に関わるパスティーシュを集めたアンソロジー。半分以上の作品は再読となるが、時を隔てているので全て読ませていただいた。
以下に挙げる作品が収録されている。それぞれほんの寸評と共にリストアップする。
講談・江戸川乱歩一代記(芦辺拓)
21世紀になって間もなくぐらいの頃合いだったと思うが、講談師旭堂南湖のために書き下ろされたのが本作。 意外や意外も何はともあれ、神田伯龍に二十面相と来るのだから読んでも痛快そのものと言える作品となっている。
無闇坂(森真沙子)
神隠しにあったかのように友人は消え失せた。そこに絡むという無闇坂は東京開発に伴い既に無いが、そのかつて無闇坂の先にあったという方城寺で起きた不可思議な惨劇、 その記録を残したのが平井太郎、つまり江戸川乱歩だというのだ。あえて団子坂やD坂を連想させる乱歩を登場させることで、物語に効果的な奇怪さを加味する作品と言えるだろう。
新・D坂の殺人事件(恩田陸)
現代の東京渋谷界隈は黒山の人だかりである。当然多数の目という目があらゆる方向に向いているといってもいい。しかしそんな中、死体がドサッと倒れ込む。誰も正確に見たはずの死体が湧いて出た瞬間を覚えていない。人間の曖昧性を説く本事件は現代の「D坂の殺人事件」だと、町の廻遊者二人はこの事件について論じ合うといったもの。極めて半端なようでいて読後感は決して半端ではないという不思議な読後感を味わえるだろう。
屋根裏の散歩者(有栖川有栖)
著者お馴染みの火村探偵物。タイトルが乱歩の作品そのままという本作。屋根裏を散歩すると言う点も全くその通り。これこそ現代版屋根裏の散歩者といいたいところだが、やはりアパートの屋根裏だ。犯人当ては全く推理小説としては適切とは言い難いものだが、屋根裏の散歩者という意味からすれば至極納得いく解決と言えるのだから面白い。
屍を(江戸川乱歩/小酒井不木)
小酒井不木が乱歩との合作名義ということで出した掌編。 死体安置所に若い女の死体を探りにくるという如何に変態的なものだが、実際はある蒐集狂の目的があるという安心させるようなちょっとした拍子抜け感を味わえる作品。
悪魔のトリル(高橋克彦)
衛生博覧会を取り上げた本作品は不思議な幻想的な雰囲気に包まれた作品となっている。かつて見た衛生博覧会の見とれるほど美しい展覧物が実際はバラバラ遺体だったというのだ。しかもそれが愛に満ちたものだというからおぞましい。乱歩も取り上げた衛生博覧会についての実情もわかる一篇となっている。
死聴率(島田荘司)
TV業界が怪しげな集計方法を採っている視聴率だけに左右されるというのは今も昔も変わらないらしい。 本作品は「目羅博士」が仕掛けた不思議な犯罪と同じような人の行動原理を遠隔操作する恐るべき犯罪譚となっている。
怪人明智文代(大槻ケンヂ)
明智小五郎の愛妻と言えば文代さんである。その文代が乱歩に宛てた手紙を発見した作者だったが、 そこに書かれていたのは怪人明智文代の誕生譚とも言えるものだったというコメディ調で楽しくも作者の愛が感じられる作品。
東京鐵道ホテル24号室(辻真先)
このタイトルを見れば何を意味するものかよくわかるというものだろう。美しい思い出と言える時期でもないにもかかわらず、回想に出てくる敗戦直後の長野から東京駅、あの紳士の行動には惚れ惚れするではないか。 ニヤリとせざるを得ない演出が心憎い作品。
女王のおしゃぶり(北杜夫)
とにかくスペシャルな怪盗ジバコ、作者のシリーズキャラクターとなっているのだが、「女王のおしゃぶり」なる珍品を狙ってきた。対するは我らが明智小五郎だ。ユーモア味だけで構成されたような本作だけに笑えることは間違いないだろう。
小説・江戸川乱歩の館(鈴木幸夫)
戦後の破天荒とも言える人付き合いの良い乱歩を描いた小説作品。これはこれで興味深い。
以下に挙げる作品が収録されている。それぞれほんの寸評と共にリストアップする。
講談・江戸川乱歩一代記(芦辺拓)
21世紀になって間もなくぐらいの頃合いだったと思うが、講談師旭堂南湖のために書き下ろされたのが本作。 意外や意外も何はともあれ、神田伯龍に二十面相と来るのだから読んでも痛快そのものと言える作品となっている。
無闇坂(森真沙子)
神隠しにあったかのように友人は消え失せた。そこに絡むという無闇坂は東京開発に伴い既に無いが、そのかつて無闇坂の先にあったという方城寺で起きた不可思議な惨劇、 その記録を残したのが平井太郎、つまり江戸川乱歩だというのだ。あえて団子坂やD坂を連想させる乱歩を登場させることで、物語に効果的な奇怪さを加味する作品と言えるだろう。
新・D坂の殺人事件(恩田陸)
現代の東京渋谷界隈は黒山の人だかりである。当然多数の目という目があらゆる方向に向いているといってもいい。しかしそんな中、死体がドサッと倒れ込む。誰も正確に見たはずの死体が湧いて出た瞬間を覚えていない。人間の曖昧性を説く本事件は現代の「D坂の殺人事件」だと、町の廻遊者二人はこの事件について論じ合うといったもの。極めて半端なようでいて読後感は決して半端ではないという不思議な読後感を味わえるだろう。
屋根裏の散歩者(有栖川有栖)
著者お馴染みの火村探偵物。タイトルが乱歩の作品そのままという本作。屋根裏を散歩すると言う点も全くその通り。これこそ現代版屋根裏の散歩者といいたいところだが、やはりアパートの屋根裏だ。犯人当ては全く推理小説としては適切とは言い難いものだが、屋根裏の散歩者という意味からすれば至極納得いく解決と言えるのだから面白い。
屍を(江戸川乱歩/小酒井不木)
小酒井不木が乱歩との合作名義ということで出した掌編。 死体安置所に若い女の死体を探りにくるという如何に変態的なものだが、実際はある蒐集狂の目的があるという安心させるようなちょっとした拍子抜け感を味わえる作品。
悪魔のトリル(高橋克彦)
衛生博覧会を取り上げた本作品は不思議な幻想的な雰囲気に包まれた作品となっている。かつて見た衛生博覧会の見とれるほど美しい展覧物が実際はバラバラ遺体だったというのだ。しかもそれが愛に満ちたものだというからおぞましい。乱歩も取り上げた衛生博覧会についての実情もわかる一篇となっている。
死聴率(島田荘司)
TV業界が怪しげな集計方法を採っている視聴率だけに左右されるというのは今も昔も変わらないらしい。 本作品は「目羅博士」が仕掛けた不思議な犯罪と同じような人の行動原理を遠隔操作する恐るべき犯罪譚となっている。
怪人明智文代(大槻ケンヂ)
明智小五郎の愛妻と言えば文代さんである。その文代が乱歩に宛てた手紙を発見した作者だったが、 そこに書かれていたのは怪人明智文代の誕生譚とも言えるものだったというコメディ調で楽しくも作者の愛が感じられる作品。
東京鐵道ホテル24号室(辻真先)
このタイトルを見れば何を意味するものかよくわかるというものだろう。美しい思い出と言える時期でもないにもかかわらず、回想に出てくる敗戦直後の長野から東京駅、あの紳士の行動には惚れ惚れするではないか。 ニヤリとせざるを得ない演出が心憎い作品。
女王のおしゃぶり(北杜夫)
とにかくスペシャルな怪盗ジバコ、作者のシリーズキャラクターとなっているのだが、「女王のおしゃぶり」なる珍品を狙ってきた。対するは我らが明智小五郎だ。ユーモア味だけで構成されたような本作だけに笑えることは間違いないだろう。
小説・江戸川乱歩の館(鈴木幸夫)
戦後の破天荒とも言える人付き合いの良い乱歩を描いた小説作品。これはこれで興味深い。