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阪急電車/有川浩/幻冬舎文庫

この記事を書いている約10年前の頃合いは阪急今津線沿線に住んでいたこともあり、今でも 愛着のある路線だ。だから以前より気にはなっていたが、手にとることは無かったのだが、 たまたま短編小説を読むのに適した状況にあったことから、ついに読むことにした。

まず勘違いがあったのが、作者の有川浩は女性だったことに初めて気がついたことだ。 内容を見ても、これは女性向けの傾向が強そうだ。女性は高校生から老齢者まで広くカバーしているが、男性は大学生と20代の社会人しかカバーしてないのが、それを如実に物語っている。

小説としては、連作短編形式の長編となっており、宝塚市西宮市を結ぶ阪急今津線の駅(往復分)が各タイトルとなっている。
阪急今津線というたった片道15分でも様々なドラマが生まれている。そのことを示す連作エピソードの数々。エピソードによっては不愉快な出来事も多数描かれるものの、最終的にはステキに類する出会いがあるという展開がよろしだ。

読後感としては、人に対する優しさ(表面的だけじゃないもの)こそ大事という当たり前のようでいて忘れがちな純粋な気分に浸れるところが良いところだろうか。
ミステリで出てくる恋愛や失恋は言わずもがなの警戒すべき展開となるので、たまにはこういう普通のもまた良しだ。


テーマ : オススメの本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団/瀬名秀明/小学館

にわかなパーマンファンとして、大人になった星野スミレ(パーマン三号)が意外な役割を果たすという噂を聞いて、購入。一気に読了しました。

ドラえもんでの星野スミレは「影取りプロジェクター」など3作でゲスト出演していますが、今作の立ち位置は最後の登場となった「目立ちライトで人気者」より少し後という設定のようでした。

15年ほど前にパラサイトイヴで一世を風靡した瀬名秀明の作品をよもやこのような形で読むことになろうとは思いもしませんでした。

基本は25年前の藤子不二雄の原作漫画およびその映画版をベースにしています(つまり2011年版の映画における改編は無関係です)。特に前半部分、リルルの企みが明らかになり、鏡面世界との出入り口で大爆発が起こるあたりまではオリジナル要素は希薄です。

中盤から後半にかけて原作に忠実でありながらも、キャラクターの心情や現実世界での動きなど原作で描ききれなかった部分についてオリジナル要素が付け加えられ、その部分も含めて素晴らしい小説になっています。特にクライマックスに近づくにつれ顕著となっていく、日常を大きく乖離した絶望と感謝と祈念が折り混じるキャラクターの心情の描写は秀逸です。ちなみにパーマンのヒロインキャラ星野スミレ、そしてエスパー魔美のゲストキャラ任紀高志らの出てくるオリジナル部分も後半が中心となっています。

もともと25年前の原作及び映画からして、ドラえもん大長編の最高傑作としての呼び声も高かった本作だからこそ、このようなクォリティの作品となったのかも知れません。
が、それでも瀬名秀明にはぜひ、他の大長編シリーズ、そしてパーマンのノベライズ化も手がけていって欲しいと思うのは贅沢かもしれませんが、素直な願いです。特に星野スミレを出したからには、須羽満夫の帰還の話をお願いしたく。

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黒龍の柩 幻冬社文庫 北方謙三

土方歳三を主役に添えたロマンチック歴史創作小説である。
通説に拘らない大胆な人物像とその見果てぬ夢には感激すら覚えるではないか。山南総長のファンとしてもこれは楽しめた。なるほど土方と山南はツーカーであったという説もあるが、これならばごく自然に解釈できる。色々と突っ込み所や気に食わない設定も多々あるのも事実(通説に囚われずに史実的にハッキリしない点などの独自解釈の連続で当然とも言える)だが、創作全体と見れば、土方の魅力とその周囲の登場人物の生き生きとした躍動。そして最後まで繋がる広大な夢。非常に読ませる秀作である。
(2005年10月読了)

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ジャンル : 本・雑誌

新選組(上)(中)(下) 学陽書房・人物文庫 村上元三

率直に言って、つまらねえ。そもそも読みたい内容じゃあねえ。そのくせ無駄に長え。と先ず書いておこう。

大河でやっているので、珍しく歴史小説でも読んでみるかという気分になって読み始めたが、正直少なからぬ予備知識がないと非常に危険である。

主人公がそもそも架空の浪人である。この時点で破綻している。更にその浪人が史実の流れに合わせるだけの、つまりご都合主義の平和主義者であり全く感情移入できようはずもない。
この三下主役の浪人氏の絡んだエピソードばかりなので、歴史小説としても、標準以上に創作度が高まっている。そもそも史上有名人を主役にした歴史小説ですら、史料に裏付けられた記述を除く創作度は90%を越えるのが普通だろうに、この小説にいたってはその殆どが架空と言っても過言ではあるまい。
まぁ、歴史舞台セットを借りた一般小説と言うことだ。三巻1300ページくらいあるのだが、700ページは主人公氏が大きく絡んでいるだけの有り得ないストーリーである。残りのページ数も多いが、新選組全般を多摩時代から五稜郭まで描いたこの小説においては、いかんせん物足りなすぎた。事実、基本的な歴史年表3ページ分すら、まともに埋め切れていない。
まぁ、とにかく言いたいのはこれを読もうと思った私の運が悪かったと言うことである。
(2004年5月読了)

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梶井基次郎小説全集 沖積舎 梶井基次郎

「檸檬」「城のある町にて」「泥濘」「路上」「橡の花――或る私信――」「過古」「雪後」「ある心の風景」「Kの昇天――或はKの溺死――」「冬の日」「蒼穹」「筧の話」「器樂的幻覺」「冬の蠅」「ある崖上の感情」「櫻の樹の下には」「愛撫」「闇の繪巻」「交尾」「のんきな患者」「瀬山の話」を収録。
圧倒的秀逸だったのが月光と影の昇天で幻想小説の「Kの昇天」。まさにこれ一つであった。他に取り敢えず面白いと云えたのが、「泥濘」「路上」「冬の蠅」「櫻の樹の下には」「愛撫」であった。いずれも不思議な気分にさせられる。
(2001年10月読了)

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