ダ・ヴィンチ・コード(上・中・下)/角川文庫/ダン・ブラウン/越前敏弥

主人公ラングドンが初めて会う日に殺されたルーブル美術館館長。そのダイイングメッセージには全体的に謎々の文章であったが、主人公の名前が含まれていたため、当局は主人公を重要容疑者と見なしてしまう。その窮地を救ったのは館長の孫だという暗号解読家であったが・・・・。
フィボナッチ数列、黄金比、アナグラムなど象徴で彩られたレオナルド・ダ・ヴィンチの芸術に隠された秘密に迫る本書である。

新旧聖書の知識すらおぼつかないようにキリスト教の基礎教養に著しく理解を欠くため一様に裏の面白さはよくわからない(この点暗唱できるように聖書で育ち、その聖書的な歴史も一般教養として持っているカトリック教徒が本書を読む時の大きな衝撃を知ることは絶対できない)。
本小説のミステリ小説としての表面だけを見ると、なじみ深い実在の人物や建物を登場させて物語を身近にしつつ、アナグラムを代表するような古典的な暗号と暗躍する秘密結社、都合良く捕まらないサスペンス、そしてこれまた古典的な宝捜しゲームにすぎない。
しかしキリスト教徒でなくとも、その必然的に捏造され続けた歴史というテーマの重大性は理解できる。二千年に及ぶ社会の根幹そのものに対する強烈なメスは、どの社会や宗教においても怖いもの見たさといった恐ろしい探求心との葛藤も絡むのだろう。

むろんこの作品に書かれた解釈が正しいとは言いきれないし、そもそも小説という形態上説明不足が生じるのは致し方あるまい。また反論する材料も山ほど出て来るのが必然であるが、本書のベストセラーという事実は現在のキリスト教社会の健全性を示すものとも言えそうだ。原理主義者は激怒してるかもしれないが…。
(2006年5月読了)

テーマ : ネタバレ無し探偵小説
ジャンル : 小説・文学

天狗の面/角川文庫/土屋隆夫

土屋隆夫の第一長篇で当然、本格ある。
滑稽とも言える田舎の農村を舞台に繰り広げられる連続殺人事件。それは天狗教ともいうべき新興宗教に絡んで発生した。
トリックはそれ程ではない気もするが、異様な構成と盲点が面白い。個人的には甲賀三郎の「羅馬の酒器」が引用されているのが嬉しい。ただこれを含めて毒殺講義は少し注意が必要だろう。 (2001年10月読了)

テーマ : ネタバレ無し探偵小説
ジャンル : 小説・文学

大いなる幻影/角川文庫/戸川昌子

昭和37年の江戸川乱歩賞受賞作である。
決して本格ミステリではなく、心理的推理小説とも言えるものだ。
過去の幻影を引きずる心の病者たちの切ない物語であり、絶賛の一書だ。
乱歩好きとして、江戸川乱歩選考委員の絶賛の言葉を引用させていただくと、「『大いなる幻影』は犯罪の謎解きではあるが、普通の本格推理小説ではなく、私のいわゆる『奇妙な味』の加味された作風で、プロットが実によく考えてある。日本人の作品にはあまり前例がなく、私はこれを読んで、プロットは全く違うけれど、カトリーヌ・アルレェの『藁の女』の読後と似たものを感じました。ことに、今まで何の関係もないように見えた挿話が、ことごとく意味を生じてくるという、推理小説の、最も大切なコツをよくわきまえた作風」と角川文庫の解説にある。
また大下宇陀児選考委員も意外性を絶賛している。
こうまで書くと、もはや私が追加して言うまでもないことがわかるであろう。心理的文学味のある普通小説らしきものがいつの間にやらミステリに化ける。私も騙された者の一人なのだった。
(2001年1月読了)

テーマ : ネタバレ無し探偵小説
ジャンル : 小説・文学

Wの悲劇/角川文庫/夏樹静子

その名に恥じぬ本格ミステリです。
半ばぐらいで、消去法的にわかりかけたような気がしましたが、証明までは無理でした。一つ難を言えば、決定的証明のためにはある一点しか材料がないことでしょうか。
それとフレデリック・ダネイ氏の解説には感動しました。
それに引き換え、権田氏の解説は最低クラスのような気がしました。この解説、両者とも読前に見るべきではないもの(少なからずネタばれ有り)なんですが、さすがにダネイ氏の方は注意書きがあるのに、権田氏のには全然皆無なのですから
(2000年1月読了)
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