あぶない叔父さん/麻耶雄嵩/新潮社

まさにタイトルどおり、やばすぎる叔父さんなのが、もはや笑うところ。トリックもバカバカしいものが目立つ。危ないまでのシュールなお笑い探偵小説と言える。

短編集であり収録作は以下の通り
・失くした御守
・転校生と放火魔
・最後の海
・旧友
・あかずの扉
・藁をも掴む

主人公は高校生の優斗なのだが、この主人公も相当やばい。エゴイストというよりは優柔不断、行動力があるのかないのかわからんが、二股やろーなのだ。彼女ともどうみても相性悪そうなのに付き合ってるという。しかも他人にはあまりが関心がないのに、何でも屋の叔父さんだけには絶大な信頼を持っているという。

帯には探偵のいない本格ミステリとあるが、金田一耕助をディスったかのような叔父さんこそが探偵役とも言える。
ただトラブルメーカー、いやその言葉では収まらないヤバさなのだが、とにかく叔父さんに悪意がないことは「最後の海」、そして「藁をも掴む」を読めばわかるだろうが、まさにうっかりもので天然だから余計に危ない叔父さんなのだ。

正直、この手の短編集でよくあるように最後にどんでん返しやら、天罰やらが世界がひっくり返るようなことがあるのかなとも思っていたので、なんだこれは? と逆に思ってしまったのが、読後直後、それから叔父さんの真意を探りたくもなって奥深いかと思ったら実はそうでもなさそうだ。叔父さんの行動原理が既にユーモアを超えているのだ。それは主人公も同様なのだが。

主人公の運命は最後の「藁をも掴む」があからさまに暗示しているのかもしれない。

さよなら神様/麻耶雄嵩/文藝春秋

子供向けにしちゃあ行けない衝撃的すぎた前作「神様ゲーム」の続編。自称神様の鈴木太郎ものである。といっても特に前作は全く読んでいる必要はない構成となっている。

「犯人は○○○○だよ」から始まる連作短編であり、6編で構成されている。前半と後半では全く印象が異なる。
最初の3編はある意味、普通。しかし中盤での軽い衝撃を挟んで、後半3編は怒濤のごとくの連続する衝撃展開である。
もはや短編集ではなく長編に近いといっても過言ではない。
相変わらず小学生らしくないメチャクチャだなと思いつつ前半3編では軽く読めたものが、後半3編の不気味なまでの不快さ、しかも増幅していく不快さは、これぞ麻耶といったところか。
そして最後は...これはユルス。

全般的にアリバイ崩しものが多い。最初に犯人が神様より指定されているから必然と言えば、必然だ。 久遠小探偵団の主人公達がその犯人に到達するための可能性を探るというのが前半の基本パターン。 しかしその前半であっても、決して1パターンにはまることないのも面白い。

「バレンタイン昔語り」では世界がひっくり返る経験をするのが衝撃。そもそもこの一編だけで、どれだけ世界が反転したものやら。 とにかく驚異的であり、そもそもこの話は本編中、もっとも重要とも言える。短編ではなくなるのが本編から。本編から実は長編だったということが判明すると言ってもいい。 そして最後の二話へと続いていく。もはや暗澹とか言ってられない夢中さ。問題は読後の気分が沈んでしまうことくらいか。

・少年探偵団と神様
・アリバイくずし
・ダムからの遠い道
・バレンタイン昔語り
・比土との対決
・さよなら、神様


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貴族探偵対女探偵/麻耶雄嵩/集英社

2014年本格ミステリベスト10の第一位。あれおかしい去年買って放置してたのに、帯は2014年を先取りか。

貴族探偵シリーズ第2弾の短編集。女探偵の高徳愛香なる四国みたいな名前の女探偵が主役の役回りをしつつ、 貴族探偵も出てくる短編5編である。

貴族探偵は例のごとく、使用人が超人推理能力者ばかりという羨むばかりの能力者だ。ふざけたキャラとは言え、最後まで読むと、実は相当な実力者なのかもしれないことがわかる。

「白きを見れば」「色に出でにけり」「むべ山風を」「幣もとりあへず」「なほあまりある」の5編を収録。
貴族探偵と女探偵だけではなく、脇役も複数の作品に出てくるなど、シリーズ物として面白い構成になっている。オチもわかりやすい。
探偵が2人いるだけに、推理展開も2回見れる。これは短編においては破格だ。使用人はもったいぶってはならないという貴族探偵というシステム上、推理にかかる尺も短いので、すらすら読めてしまうのも良い。

「白きを見れば」は曰く付きの井戸のある家で起こった事件。まず本シリーズのお約束を知る前までだけに普通に楽しめるオーソドックス。
「色に出でにけり」は複数の恋人を同時に持つ令嬢家で起きた悲劇。シンプルな事件の真相、そして占いはわかりやすくも明瞭で楽しい。
「むべ山風を」は大学構内で発生した事件。ティーカップがキーになりつつ、これまた鮮やか。
「幣もとりあへず」は座敷童伝説はエッセンス。新潟の中の片田舎の旅館で発生する事件。混乱する叙述トリックも楽しい。
「なほあまりある」は四国の離島での事件で、本書の掉尾をかざるに相応しい連続殺人。

本格ミステリという非日常を、貴族探偵というふざけたキャラや師匠に先立たれて独立した若き女探偵という有り得そうもない世界にて、 突き詰めとおしたユーモア溢れつつも、前述したように本格ミステリの謎解きを複数回という豪華な短編集となっている。

神様ゲーム/麻耶雄嵩/講談社ノベルス

7年前の作品が今頃ノベルス化される意味がよくわからないが、過去の麻耶作品で読んでいない2冊の一つだったため、 思わず購入となった。(こういう人がそれなりの数いないと売れないのだが大丈夫か?)

元はジュブナイルとして書かれた作品のようだが、内容を見ると暗澹たるもので、とてもじゃないが子どもに見せて良いような代物じゃないことがわかる。 主人公は芳雄という名前で少年探偵団の団員にもなっている。江戸川乱歩の少年探偵団シリーズを思い浮かばない人はいないだろうというような設定こそは少年ものなのだが、それが生々しいまでの体験をしてしまっているだけに、他の明確な大人物の麻耶ワールドの方がまだマシとも取れるぐらいだ。

最初の猫殺害の描写も猫好きにとっては不快で読むに耐えない描写なのだが、主人公のいる少年探偵団はまずその事件の解決に向けて集合する。秘密基地ともなっている空き家である。 それがいつしか殺人事件に巻き込まれる形になるのだ。

そのような状況に置かれることになった理由には神様ゲームがある。トイレ掃除で会話をすることになったクラスメートの鈴木君は自分が神様だと言うのだ。そして何もかも知っているのだと。 主人公は猫や人の死亡事件について鈴木君に質問をし、天誅をすら希望する。果たして神様の力によるものなのか、恐るべき神様ゲームの結末とは? 終盤からして不快な気分になりそうな展開続きな上に、読後感も最悪に近い上に、その上意味がわかるまでに時間がかかる。 神様は嘘をつかないとすれば、考えるまでもないシンプルな解答しかないのだが・・・。

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隻眼の少女/麻耶雄嵩/文藝春秋

2011年本格ミステリベスト10の1位作品とはいえ、麻耶雄嵩なんだから、きっと変な作品だろう、と期待して読み始める。

語り手の主人公は父が母を殺し、父を過失とはいえ殺してしまった世に絶望した22の男。
自殺場所を探して、古い因習が根強い栖苅(スガル)村にやってきていた。
今事件は彼の人生を大きく左右するものになったのだろうか?
もう一人の主人公とも言うべき隻眼の少女は、平安時代の衣装である水干を身にまとった探偵。同様に隻眼だった亡き母親が名探偵で、警察にも一目置かれている。父親とともに、同じく栖苅(スガル)村にやってきていた。
今事件は彼女の人生を大きく左右するものになったのだろうか?
その栖苅(スガル)村で発生する連続殺人事件。うら若い娘の首が意味ありげに切断されるという凄惨なものだった。
そんな筋にもかかわらず、所々で微笑、苦笑、哄笑、爆笑する場面があり、全体で見ると微笑が多いくらいだ。

物語は、第一部1985年編と2003年編に分かれている。
1985年編がメインであり、これ単体でも独立した面白さは確保している。
自殺志願者の主人公が探偵助手見習いになり、探偵役の隻眼の少女と仲良くやっていく様はほほえましいものがあるだろう。
もっとも2003年編で、絶品のナンセンスを味わうことだが。



個人的な感想を言えば楽しめた。本格探偵小説としては古典的な手法の使い回しに過ぎないのだが、用意した道具立てが豪華絢爛というか、各種の笑いを誘うものだというか。一気に何種類の小説のタイプを味わうことが出来る贅沢さというか。水干やらオコジョが意外なところで役に立っていると馬鹿馬鹿しさだったりというか。
読後感が良いというのも変な話だが薄気味の悪さを感じる話だった。

メルカトルや貴族探偵、烏有などもそうだが、この隻眼の探偵が活躍するものは今後も読んでみたいものだ。もちろん今作と全く関係ない話でだが。


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