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7人の名探偵(新本格30周年記念アンソロジー)/文芸第三出版部編/講談社ノベルス

綾辻行人のレビュー、つまり新本格ムーブメントが発生して30年を記念したアンソロジー。

タイトルの通り、7人の新本格初期デビュー組作家による豪華すぎる「名探偵」をテーマとした作品集となっている。

ちなみにわしの買った本の栞は麻耶雄嵩だった。

「水曜日と金曜日が嫌い」は麻耶雄嵩のメルカトル鮎もの。サブタイトルの大鏡家殺人事件というのも心憎い。
美袋三条が山で遭難して辿り着いた洋館で発生した殺人事件というオーソドックスのようで、最後まで通して麻耶らしい作品となっている。

「毒饅頭怖い」は山口雅也の作品。落語ミステリ。本作中の独自路線でオチが面白い。

「プロジェクト・シャーロック」は我孫子武丸。本作の最高傑作と勝手に思っている。名探偵かくも進化するかと思いきや。

「船長が死んだ夜」は有栖川有栖。本作品集で一番オーソドックスな本格ミステリといえる安定の火村と有栖川もの。真ん中の配置は非常に正しい。

「あべこべの遺書」は法月綸太郎。こちらも安定の法月父子もので安定のオーソドックス本格もの。乱歩の吸血鬼が引用されている点から推理ロジックまで素晴らしい。

「天才少年の見た夢は」は歌野晶午もの。特殊な状況下における謎が面白い。この配置は狙ったものならばそのつもりなのだろう。

「仮題・ぬえの密室」は綾辻行人。本アンソロジーの掉尾を飾るに相応しい作品。ボーナストラックといっても過言ではないファンサービス作品。
読者にも30年の歴史の重みを思い起こさせるのだからすばらしい。



奇面館の殺人(上)(下)/綾辻行人/講談社文庫

綾辻の熱烈ファンというわけではないから、分厚い暗黒館をスルーしたため、
10年ぶりくらいに読んだかもしれない館シリーズ


それでも本格ミステリファンにとっては期待と安心のシリーズであり、
15年~20年近く前に読んだ初期の館シリーズと比しても遜色ないどころか、
その奇抜な設定にあっても、明快なまでにオーソドックスな本格なところは嬉しい作品だったと言える。

奇面館の主人は自分も含めて顔の表情に恐怖する人間。それでいて自分そっくりな人間を捜し求める血筋だった。
その手段として自分の誕生日に近い者を館に招き入れたのだが、そこで予期せぬ殺人事件が勃発する。両手と首が消失した死体となっていたのだ。しかも招待客達は寝ている間に鍵付の仮面を取り付けられているという怪奇。

東京郊外にして10年に一度の大雪のため脱出不可能な真冬の山荘と化した邸内で行ったこの奇々怪々な事件の真相とはいかなるものだったか。


tag : 本格新本格綾辻行人館シリーズ

眼球奇譚 祥伝社ノン・ノベル 綾辻行人

ホラー短編集。「再生」「呼子池の怪魚」「特別料理」「バースデー・プレゼント」「鉄橋」「人形」「眼球奇譚」を収録。
それなりに楽しめたのが、「再生」「呼子池の怪魚」「眼球奇譚」であり、それに続くのが「鉄橋」「人形」、面白さの全然わからぬのが「バースデー・プレゼント」、ただ気色の悪いだけで全くつまらないものが「特別料理」であった。
(2000年8月読了)

テーマ : ネタバレ無し探偵小説
ジャンル : 小説・文学

霧越邸殺人事件/新潮文庫/綾辻行人

あらゆる点で不可思議性に溢れ本格ミステリとして完成度が高い作品であったと思う。最終的な展開には息を付く面白さであった。
(2000年7月読了)

テーマ : ネタバレ無し探偵小説
ジャンル : 小説・文学

黒猫館の殺人(講談社文庫/綾辻行人)

2003年末の新幹線で読了。新幹線の道中半分くらいで読むにはちょうどいい分量と読みやすさであったから選出。

「時計館」の直接的続編と言える。
展開としては記憶を無くした老人の手紙が現実か否かという展開である。
トリックは壮大ながら今読むと大した物に思えないレベルだが、新本格として書かれた時期を考えると評価出来るだろう。
その後のバリエーションは新本格以降の熱心でない読者私ですらいくつか思い浮かぶほどである。

どうも内容の割には、文体的に話を軽く感じてしまう感が拭えない、深みが足りないのが、最大の欠点だろうか。
だから「時計館」「人形館」「迷路館」「十角館」に比べたら、随分落ちるという印象だになってしまうのだ。
(2003年12月読了)

テーマ : ネタバレ無し探偵小説
ジャンル : 小説・文学

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