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虹果て村の秘密/有栖川有栖/講談社文庫

元がジュブナイルということだけあり、なによりも心地よく読後感もさわやかそのもののオーソドックスな本格ミステリだ。

母親がミステリ作家の優希(ユー)は小学6年生。将来は刑事志望なのだが、夏休みに母親の故郷であり別荘がある地である虹果て村を訪れていた。同行者は級友で父親が刑事、ミステリ作家志望の秀介のみ。 母親は遅れてやっってくる予定だったものの、仕事+台風などのために作品には登場できなかったが、多くの名言を残してくれたため、解説でも 触れられているように印象は深い。

虹果て村は虹にまつわる伝説の多い地である。そこでは高速道路建設を巡って、賛成派と反対派が争うという状況となっていた。 そうした最中、反対派の一人が殺害される。状況は密室。ダイイングメッセージ付きだ。怪しい賛成派にはアリバイのものも多かった。 ユーと秀介は協力して事件の謎を解き明かそうとするが。。。という展開。

上記のようにアリバイ、密室、ダイイングメッセージといった本格ミステリの基本を為す要素が古典的なオーソドックスな形で活用されているのが 本書の優れたところ。犯人当ての推理は十二分に楽しめるだろう。元が本格ミステリ初心者を対象にしているので当たり前なのだが、この古典的手法というのがファンにとっても 非常に喜ばしい形式でもあり、時には望まれる形なのだった。

本格ミステリ初心者には入門編として是非お勧めしたい一書だ。
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長い廊下がある家/有栖川有栖/光文社文庫

火村准教授と作家有栖川有栖シリーズ物。
「長い廊下がある家」、「雪と金婚式」、「天空の眼」、「ロジカル・デスゲーム」の4本の短編を収録。


表題作の「長い廊下がある家」は火村准教授の学生が冬の廃村にて遭遇する不可能犯罪事件。
2つの家が地下の長い廊下にて接続されているという状況下で、殺人事件が発生する。
しかし長い廊下の途中に位置する扉は固く施錠されており、死体と殺害場所は、容疑者達とは扉を挟んで反対側。アリバイ時間内には 到達不可能にあるという状況。この事件の謎は?
という話。

どうにも人間心理からして納得いきかねる結末だった。これならば有栖の考えた壮大なトリックの方が面白かったのでは? という感想。


「雪と金婚式」は、仲良し夫婦の金婚式の祝い日に、離れで厄介者の親戚が殺害されるという事件。
容疑者は絞れていたものの、どちらにもアリバイがあるという状況。にもかかわらず、雪降る晩に起こった事件について、 夫は犯人を推理していたが、偶然にも記憶喪失になってしまったため、犯人当てについて火村の出番が来たという展開

その場で認識したその時の状況が必ずしも真実ではないというところが面白いところか。


「天空の眼」、火村助教授が出てこず、結果的に有栖川だけで事件に挑む形となるのが本編。
幽霊の映った写真の相談を受けたこと、その幽霊が映っていると指摘した人物が鉄壁のアリバイを持ちながら、殺人事件の重要人物に取り上げられているという。 有栖川は足を使った実地調査から幽霊と、そして事件の謎を妄想する。

異色作だけに興味深く読める一作。


「ロジカル・デスゲーム」、こちらは基本的に火村准教授と犯人の二人だけが唯一の登場人物。その時点で異色作だが、 この表題作にも嘘偽りもなく、3つのグラスの一つに致死量ちょうどの毒薬が入っているという死のゲームを 火村准教授に挑む変質者が主人公なのである。さてゲームの顛末は?

本短編集で最大に評価できるのが本作である。異色作というのも手伝うが、火村の出した運ではなく論理から導かれた結論の鮮やかさには拍手するしかない。

テーマ : オススメの本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

江神二郎の洞察/有栖川有栖/東京創元社

私自身が学生だったころから愛読していたシリーズの短編集だから感慨深かった。
その割に購入して半年以上放置となっていたのはご愛敬だ。

収録作は次の通り。
瑠璃荘事件、ハードロック・ラバーズ・オンリー、やけた線路の上の死体、桜川のオフィーリア、 四分間では短すぎる、開かずの間の怪、二十世紀的誘拐、除夜を歩く、蕩尽に関する一考察

全体的にアリスたち英都大学推理小説研究会のメンバーによる日常の謎に挑むことになる短編集になっている。

「瑠璃荘事件」は望月周平が下宿でちょっとした泥棒として疑われている状況を、論理的に真犯人を当てるというもの。

「ハードロック・ラバーズ・オンリー」はロック喫茶の顔見知り女性に町中で声が届かないという不思議について。

「やけた線路の上の死体」はレビュー作の鉄道アリバイもの。望月周平の故郷和歌山県南部町が舞台。

「桜川のオフィーリア」は英都大学推理小説研究会の創設者が登場する。過去の水死体として出てきた少女の写真を持っていた真意とは?

「四分間では短すぎる」は隣の公衆電話から聞こえてきた表題のセリフについて、そこから物語を推理する

「開かずの間の怪」は幽霊屋敷物。不可思議な怪奇現象に直面する面々。

「二十世紀的誘拐」は望月、織田の担当教授の家の叔父の絵画が盗まれるという事件。犯人は弟とわかっているが、その二十世紀的犯罪とは?

「除夜を歩く」はアリスと江神のみが登場するが、題材は望月の書いた犯人当て小説。二人の会話が楽しい。

「蕩尽に関する一考察」はマリア登場から入部までの顛末。古本屋主人が浪費して回りに金をばらまく理由は?



全体的に言えるのは、単なるミステリの短編集として見たらきっと物足りないのは間違いないが、 アリスとその先輩たちとの深い繋がりを楽しめるのは間違いないというものだ。

江神、望月、織田、アリス、マリアとこの面々の話が読めるだけで不思議な喜びを感じている。

今現在のファンはもちろん、かつて学生アリスシリーズファンだったならば、きっと懐かしくも楽しめる短編集なのは間違いない。

テーマ : ネタバレ無し探偵小説
ジャンル : 小説・文学

妃は船を沈める/有栖川有栖/光文社文庫

久々に本格ミステリを読みたくなった。
ストックには森博嗣の文庫本があるが、如何せん分厚すぎて読み出す気がしない。
そこで薄めでかつ魅力的なタイトルの文庫本または最近のノベルスを、お気に入り作家の中から探すことになるのだが、見つからなかった。
石持浅海と有栖川有栖が残ったが、どちらもタイトル的に今ひとつであった。それで迷ったあげくに本書を買ったという始末。

なぜ本書がいまいちなタイトルかといえば、帯が「臨床犯罪学者 火村英生の前に立ちはだかる魅惑の女」
なんとも売り文句が安っぽいではないか。という点が気になったのだ。また直感的に、 これは犯人を最初から宣言しているではないか、本当に本格ミステリか? と思ったのもある。

しかし読了後、これらは良い意味で裏切られたのだった。


作品は中編二本「猿の左手」「残酷な揺り籠」を組み合わせた一本の長編となっている。と作者の有栖川有栖が冒頭の「はしがき」で宣言している。
それが大きな効果を生み出すとはなかなか思いもしない。感想は正直なところ後書きの西沢保彦のものと似たようなものだ。確かに 二本の中編は完全に独立しているが、同時に見事なまでに一本の長編としての効果も出している。

表題作がテーマになっているのはもちろんのことだが、作者が冒頭で断っているようにジェイコブスの名作怪奇短編「猿の手」が本作を通じたテーマともなっている。 この解釈を巡る展開がまた面白い。
中編の二編で発生する謎そのものは、どちらも表題と「猿の手」のエッセンスが無ければ、平凡とも言えるものかも知れない。それは中編と見て独立作品として 読んだ場合は顕著であろう。しかしこれらのエッセンスが加わることで長編として一気に楽しめる作品に仕上がっているのである。

事件としては以下のような発端。
「猿の左手」は、若い燕を周りに侍らせる妃と呼ばれる表題作ともなっている女性の友人の夫が睡眠薬を飲んだ状態で自動車から海に転落したと言う事件。舞台は大阪市
「残酷な揺り籠」は、妃夫妻の家で妃の元シンパが銃殺されるという事件。主な舞台は豊能町

テーマ : ネタバレ無し探偵小説
ジャンル : 小説・文学

有栖川有栖の鉄道ミステリー旅/有栖川有栖/光文社文庫

何のことはない。ミステリー小説でもなければミステリー評論でもない。
旅路に様々な鉄道に乗ることが有栖川有栖の趣味ということで、その鉄ちゃんぶりを披露したエッセイとなっている。

鉄道ミステリーについて述べた章もあるにはあるが、あくまで本題は日本全国の鉄道旅、その素晴らしさを説くといったもの。

私も自動車よりは鉄道の方が性に合っている。移動しながら寝るか読書するかを同時に出来る鉄道は非常に便利だからだ。
自動車ではそうはいかない。むしろ運転に疲れるのがオチであり、運転役でなくても本を読むと酔って気分が悪くなるタチである。
決して趣味というわけではないが、たまに妙なルートで無理矢理乗ったことがない電車や久しぶりの電車に乗りたくなるときもあるので、少しは有栖川有栖の感慨にも共感できるというものか。

とにかくこの本は、ミステリファン以外は買わないとは思うが、全くミステリではないので注意。

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