裏表紙の説明書きの次の通り
あの殺人ゲームが帰ってきた! ネット上で繰り広げられる奇妙な推理合戦。その凝りに凝った殺人トリックは全て、五人のゲーマーによって実際に行われたものだった。トリック重視の殺人、被害者なんて誰でもいい。名探偵でありながら殺人鬼でもある五人を襲う。驚愕の結末とは。<本格ミステリ大賞受賞作>
そもそも前回の続編ってどういうこと? ってところから始まる。その疑問が強いだけに、その前回の印象が強いだけに、小説としては完全にだまされていたとも言える。
そして鬼畜犯罪者が探偵役も務めるからキャラに感情移入もするわけだが、その複雑なこと。この気持ち悪いまでに奇妙なのに魅力あるキャラ達が不可思議なのだ。前回のようなこともなく、今回ばかりは想像を絶する殺人ゲームのまでに絶句するしかなかった。
インスタにも投稿済みだが、こちらのブログにも書いて記録しておく。感想は少々改稿程度。
2007年頃の歌野晶午作品で、一気に読まないほうが良いタイプの長編だ。ジックリ読んだ方が推理も確実に進められるだろうから。
ネタバレはしてないはずの感想を続ける。
ハンドルネームで呼び合う五人はオンラインで会合して探偵ごっこをする5人なのだが、そのうちの一人が実際に殺人をした上で問題を作り披露。その問題を残り4人が推理して論理的にhowを解き明かすというもの。
とんでもなく病んだ設定だけに、推理ゲームという意味でのゲーム性は高い。
一気に読まなかったのが効を奏して最初の問題はとてもわかりやすく私も逆のアプローチからそれほど苦も無く次の事件を防げるかもくらいには迫れたのに、作中の誰もが何も気がつかないのでこいつら大丈夫かと心配にはなったくらいだったが、その後の生首の奴は圧巻で唖然となった。作品単体ならこれが群を抜いている。さらに言い過ぎるとネタバレになるのがもどかしいが、後半も問題そのものもだが、この長編作品にとても驚くことになる。
帯にもあるように、同シリーズの続編もあるみたいなので楽しみにしておこう。新本格初期の中でもなぜか歌野晶午は学生時代に読まなかったせいでその後もあまりよんでおらなんだ。そのためまだまだ面白い作品がありそうで今後の楽しみだ。
スーパーの保安をしていた主人公の平田は万引き女の末永ますみの年齢が死んだ娘と同じことから、つい警察へ突き出さずにあっさり返してしまった。
平田の人生と末永ますみ、二人の幸福とは言いがたい人生が交錯したことより、不思議な結末へ導かれていく。
本格ミステリ作家の歌野作品として読むと、非常に物足りない。文庫本の裏表紙には究極の結末とあるが、どうにもさすがに納得しかねるものが残る。確かに究極には違いないのだろうが、それがどうにも違和感があるのだ。
本格ミステリならこれはあくまで前編(表)であってほしかった。後編こそが驚天動地の真実。いや、それをあえて出さないところが素晴らしいかもしれないが。いや、まさにそのような気もしてきたから圧巻なのかもしれない。
江戸川乱歩の小説を現在風にオマージュした歌野晶午の短編集ということなのだろう。
どうにも味付けがおかしな方向へ行ってる点も気になる作品があるが、いくつかは上手くいっている。
「椅子? 人間!」は乱歩「人間椅子」に対する歌野の回答。人間椅子の活用という意味ではオマージュ度は高いが、「人間椅子」に対してはオマージュ度はとても低いと言える。恨みつらみの結果、女流作家に仕掛けたおそるべき罠。
これは結末は見せる必要はなかったのではないか。
「スマホと旅する男」は乱歩「押絵と旅する男」に対するオマージュ度は最低レベルと言ってもいい。何もわかっていないということはないだろうから、わざとなのだろうが、どうにも不快なのは、私の性分なのかもしれないが。スマホに人工知能を植え付け、それと旅している男と思いきや、それすらも達成できていない。
なぜ次元が異ならせたのか理解に苦しむ設定であった。異次元的な効果だけ借りようとしても全く詮無いことでナンセンスだ。
そもそも本作品集でもっとも最悪なのが、この手のIT技術系の作品としてしまうのは、興ざめというしかない。
「蟲」モチーフ作品ならば、良作と思えただけに残念なところか。
「Dの殺人事件、まことに恐ろしきは」は「D坂の殺人事件」に対するオマージュが良い感じに溶け込んでいる作品。
少年を相棒にして、その少年が事件の軸となるところが効果的となっているのだが、下手な推理は身を破滅させるということだ。
「「お勢登場」を読んだ男」はオマージュ度がもっとも高い作品とも言え、下手な小細工も存在せず、乱歩ファンとしてはもっとも楽しめた作品といえる。
そのまま現在の「お勢登場」すぎてニヤリとしてしまうが、発見の段がなかったのは痛恨の誤りだろう。あれがないと「お勢登場」とは言えない。
「赤い部屋はいかにリフォームされたか?」は舞台で「赤い部屋」を演じて、演じて、よもやの展開になる作品。
読ませる作品ではあるが、まるでコントのような作品になっている。もっともあれがないと締まらないのも確か。
「陰獣幻戯」は「陰獣」+「化人幻戯」なのだろうが、設定自体の安っぽさはあるものの、印象づける伏線ゆえに仕方ないのか。
それゆえに寒川と大江春泥どちらも存在しないDMの主の正体が暴露するところから終末までは一気呵成だ。
「人でなしの恋からはじまる物語」は、まさにタイトルの通りなのだが、これも「人でなしの恋」の部分があまりにも力業で
どうにもいただけない。現在のリアリティになっていない。どういうことだよ、とその人でなしの恋になってしまう闇に興味が向くではないか。
後半は灰色の中の微笑み、悪くはないが、強烈な物語を期待している中では落ち着いた終わり方。まぁ悪くはないが、ともう一度。
帯に「家に渦まく人間の思惑は奇怪な事件を作り出す」と書かれている通りの本格ミステリ短編集。
「人形師の家で」「家守」「埴生の宿」「鄙」「転居先不明」の5編を収録している。
やはり表題作の「家守」を筆頭に、表の事件、裏の事件、双方の絡み合いの収束がもたらす真実に愕然としてしまう作品群となっている。
「人形師の家」はギリシャ神話のピグマリオンによる人形愛の話から始まり、それを現実化させようとする男の話。
そして両親が殺人事件でいなくなった男の少年時代から現在の話。人形愛する男の二十面相の隠れ家のような洋館における少年時代の友人失踪事件も含めて、複数の話がリンクする話の融合が素晴らしい。まさかの着地点という真相には驚くしかないだろう。
「家守」はオーソドックスな本格ミステリからすれば、至高のアリバイ&密室殺人物と言える。妻が朝起きたら窒息死していたという事件。
家自体が完全密室だったため自殺と思われたが、旦那があからさまに怪しいという展開。オーソドックスだからこそ素晴らしい。完全犯罪物だ。
なおかつそれだけにとどまらないところが凄い。ハムスター殺害事件とのリンク、道路拡張の立ち退きを退ける真の理由という過去の事件とのリンク
「埴生の宿」は認知症老人が家族を家族と認識できないという描写で始まる。そこでそっくりさんを高額バイトで雇い、
埴生の宿にて、老人に対して本当の家族が帰ってきたかのような幻想をみせようとするが、という展開。
少ない登場人物、それぞれの視点の移り変わりは見事だろう。事件としてはもっとも単純かもしれないが、非常に深い。
「鄙」はど田舎に訪れた官能小説家の兄と雑用係の弟の話。そこには二つの名字しか存在せず、運命共同体の村落だった。
例外的に医者のみが外部の人間と言った体だ。そこに東京からやってきた兄弟と10年ぶりの里帰りした村出身の男だった。
殺人事件そのものは単純だが、背景を含めた欺瞞が面白い作品だ。
「転居先不明」はもっともコメディチックな作品だが、笑って良いものやらなかなか難しい。
妻は視線を感じてストーカーではないかと夫に訴えかけるという流れから、格安物件は訳あり物件であり、実は殺人事件の舞台だったという
展開にまで発展するが。。。作中語られる殺人事件の二転三転の凄惨さに比べると、実際は平和なのだが、果たして本当にそうか?
プロバビリティの犯罪という言葉が出てくるところは興味を引く。