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高い城の男/フィリップ・K・ディック/ハヤカワ文庫

夏には読み終わっていたが、記録するのをすっかり忘れていた。このときは第二次大戦のIF物が読みたい心境だったので本書にたどり着いていた。

第二次世界大戦を枢軸陣営が勝利した世界を描いた歴史のIFのSFが本作である。1963年の作品。
世界はドイツ第三帝国と大日本帝国に二分されているといっても良い時代となっていた。


惑星間ロケットを飛ばし革新的発明で技術をリードするドイツの科学技術に比べ、日本の支配地域の文明は現実よりも遅れており、 タクシーも自動車ではなく、いまだに輪タクが主流となっているところがその象徴的なものとなっている。

ただその一方で本作では日本は大正時代のような精神面で秀でた紳士的な国として描かれているが、ドイツはまさにナチ政権の延長のため、 言論統制も厳しく非常に危険な臭いが漂い狂気的というしか無い状況である。

なんと言ってもそのSF設定も面白いが、人物描写が素晴らしい。外国人が描いた日本人としては特に易経を多用するところなど違和感もあるが、その易経は本作の屋台骨と言ってもいいぐらい重要なファクターでもある
。また「イナゴ身重く横たわる」という第二次世界大戦で連合国が枢軸国に勝利した世界を描いたSF小説が登場し、それがまたこのSFも大きく彩っている。
というのも易経にせよ、「イナゴ身重く横たわる」にせよ、敗戦国となったアメリカで流行しているのだ。
ちなみに「イナゴ」は日本および日本陣営では普通に流通しているが、ドイツおよびドイツ陣営では固く発禁処分になされている。


複雑だ。虚構世界と田上氏の観たような現実世界、その差異は複雑だ。新たな境地に達する登場人物達の描写が素晴らしく複雑だ。


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