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蝶と処方箋/蘭郁二郎

 「新青年」昭和13年12月号発表の作品。

色眼鏡をかけてソワソワ周囲を伺いながら不思議な行動を取る女性に気を取られつつも 手に入れたのは不思議な処方箋の書かれた紙片。薬の処方箋としてはデタラメなことから解読してみると、恐るべき暗号文のようなのだ。 しかし果たして不思議な落とし主の女性の宅は蝶だらけのマニアックさ。このあべこべはいかなるものか?

ユーモア味あふれる暗号小説で、蘭郁二郎らしい女性とのやり取りもまた楽しい。

なお現在、ミステリー文学資料館編の光文社文庫『悪魔黙示録「新青年」一九三八』などで読むことが可能となっている。
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テーマ : ネタバレ無し探偵小説
ジャンル : 小説・文学

太平洋飛行島/蘭郁二郎

蘭郁二郎、昭和15年「青年」8月号に発表した作品。軍事小説である。

従軍記者の主人公は太平洋上でA国と対峙する艦艇に乗り込んでいた。今にも決戦間近という時だ。そこで海上に信じられぬものを目にする。太平洋飛行島、それは東京湾の羽田空港のことだったのだ。
移動式空港、空母をも陵駕するその科学力。しかも野菜栽培などでビタミン不足などにも対処できるという。
A国との戦いは始まるが、驚嘆すべき科学力! テレビジョンによる中継、煙幕の無効化、無人爆撃機、無機物・鉄を溶かす細菌兵器。そして科学には関係ないが、海軍保有の太平洋飛行島には陸軍機も共同作戦をとっているという驚き。
勝利は勝利、大勝利だったが、最後に意外なオチが待っていたという話。

昭和15年ともなると、日米開戦まで2年を切っているだけに、時局柄、軍事小説の類が増えてくるのは仕方がないことなのだう。
それでも蘭郁二郎の妄想とは素晴らしいものだ。軍事小説の体裁こそは取ってはいるが、平成復刻版黒崎義久氏の解説を読むと、太平洋飛行島とは現在は一部実用化されているメガフロートに相当するものらしい。
無電操縦という無人飛行機による戦争というものは恐ろしいものだが、これも現在の米軍が適用しているようなものなのだろう。最後のオチも含めて、何とも現代的なものよ、と思ってしまった。
それにしても昭和15年の時点で、米軍の物量差、戦略差などよくわかっているようにも見えるだけに、日本を救うには科学力こそ重要と思っていたのだろうか。

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雪の山小屋の事件/蘭郁二郎

蘭郁二郎、昭和十五年「小学六年生」一月号掲載の短編。少年物の探偵物語である。「大宮博士の事件」「不思議な電話の事件」「飾り時計の事件」などでもおなじみの照夫君シリーズである。これもかつて10年前には黒崎義久氏の電子書籍で読めた。

この照夫君、並外れた推理能力だけに飽きたらずスキー能力も相当なものらしい。まさにスーパー少年。展開としては、語り手の私(この私もスキーでは照夫君と互角の模様)と照夫君はスキーに山へやってきていたが、吹雪にあい、山小屋に避難することになった。その明くる朝、吹雪は止んだものの、近隣の大金持ちが家で殺害されているというもの。

この手の話によくあるとおり、雪には足跡の類はないという不可能犯罪ものとなっているが、照夫君は見つけたスキー杖からあっさりと事件の真相を見抜き、事件は解決するのだった。

現在の観点でいえばトリックは取るに足らないものだが、それだけに現実的とも言え、そしてちゃんとしたトリックが用意されているのは探偵小説短編として十分に役割を果たしていると言える。

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青い朝/蘭郁二郎

蘭郁二郎、昭和15年「新青年」10月号発表の短編。科学小説では全くなく、時代を象徴した普通の小説というべきなのか。 かつて発行されていた黒崎義久氏の電子書籍で読むことが出来た。現在ではおそらく本の友社の「新青年復刻版」で読むしかないと思われる。

病気から回復した主人公は銀座で旧友を出会う約束をした。仕事に復帰するための相談のつもりだったが、旧友は意外にも美しい妹を連れていた。
親友の父親は支那から帰ってきたということだったが、後日、多忙につき再度支那に戻ったという。
精神的に不安定で仕事復帰の話をなかなか切り出せない主人公は親友の妹に恋心を抱くが、それでも後日、親友の勧めもあって、外地で仕事をする決意を表明する。
妹への恋心もそこで終わりかと思われたが、支那へ出かける際の羽田空港で待ち受けていた事実は、「青い朝」だった。主人公は素晴らしい心地で外地へ出かけるのである。

探偵小説でも科学小説でもスパイ小説でも犯罪小説でも全く兆しすら見せることはない。ただ結末が心地よいというのは読者も同様であった。
外地という新天地へ向かう青年の姿を描いた小説となっており、当時の社会というものを知る上では一助になるだろう。

テーマ : ネタバレ無し探偵小説
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睡魔/蘭郁二郎

蘭郁二郎、昭和15年「ユーモアクラブ」二月号掲載の短編。殺人音波を取り扱った科学スパイ小説である。

高校を中退した旧友は妹連れで華やかなバーにやってきていた。犬屋をしているといい、小型犬を連れてきていた。主人公は研究所勤めの医者であり、昨今はやりの伝染病、通称「眠り病」を研究しているのだが、時も早々、連れの女が眠り病に倒れてしまう。更に眠り病は帝都東京に蔓延し、ついには死都と新聞に書き立てられる有様だ。しかし主人公も去る者、眠り病が発現したときの犬たちの様子から、恐るべき陰謀を突き止めるというお話。

序盤の平和な展開からは予想しない方向にストーリーが流れるという点は意外かもしれない。
昨今では殺人音波などといった物理的な兵器よりも、伝染病を生み出すような細菌兵器の方に恐怖を感じるものだが、当時においては光線とか電波とか、音波とかの方が大きな恐怖の対象となり得たということらしい。

犬屋の旧友は茅ヶ崎住まいということ。現在の茅ヶ崎市と言えば東京近郊のベッドタウンである。当時も鉄道にさえ乗れば東京の中心部まで近いことには違いないのだが、作中の記述を見ると、東京と湘南の間の精神的な距離は現在の比べものにならないくらい遠かった様子がうかがえる。
現在国書刊行会の「火星の魔術師」で読むことが可能。

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