はじめに

このブログでは、戦前の探偵小説、戦後の本格推理小説、平成の新本格ミステリ、欧米黄金時代(戦前)の本格ミステリを中心した、各種小説作品についての感想を記していきます。

基本的には左側のバーにある「カテゴリ」から作家名を選択すれば、その作家の作品の感想記事を読むことが出来る構成にしています。

なお戦前探偵小説作家の中でも、江戸川乱歩と甲賀三郎作品については、別途専用のホームページを作成しており、そちらに小説の感想も記していますので、そちらにもお立ち寄りいただければと思います。

江戸川乱歩:乱歩の世界 | 甲賀三郎:甲賀三郎の世界


また歴史物の書物についての感想等は以下の専用ページに記しています。

古代史の夢 | 中世史関連 | 近現代書の所見



旧読書記録は「乱歩の世界」内の1コンテンツとして設けていましたが、既に殆どの記事は、このブログまたは上記のいずれかに記載を転記済となっています。

春から夏、やがて冬/文春文庫/歌野晶午

スーパーの保安をしていた主人公の平田は万引き女の末永ますみの年齢が死んだ娘と同じことから、つい警察へ突き出さずにあっさり返してしまった。
平田の人生と末永ますみ、二人の幸福とは言いがたい人生が交錯したことより、不思議な結末へ導かれていく。


本格ミステリ作家の歌野作品として読むと、非常に物足りない。文庫本の裏表紙には究極の結末とあるが、どうにもさすがに納得しかねるものが残る。確かに究極には違いないのだろうが、それがどうにも違和感があるのだ。

本格ミステリならこれはあくまで前編(表)であってほしかった。後編こそが驚天動地の真実。いや、それをあえて出さないところが素晴らしいかもしれないが。いや、まさにそのような気もしてきたから圧巻なのかもしれない。


奇面館の殺人(上)(下)/綾辻行人/講談社文庫

綾辻の熱烈ファンというわけではないから、分厚い暗黒館をスルーしたため、
10年ぶりくらいに読んだかもしれない館シリーズ


それでも本格ミステリファンにとっては期待と安心のシリーズであり、
15年~20年近く前に読んだ初期の館シリーズと比しても遜色ないどころか、
その奇抜な設定にあっても、明快なまでにオーソドックスな本格なところは嬉しい作品だったと言える。

奇面館の主人は自分も含めて顔の表情に恐怖する人間。それでいて自分そっくりな人間を捜し求める血筋だった。
その手段として自分の誕生日に近い者を館に招き入れたのだが、そこで予期せぬ殺人事件が勃発する。両手と首が消失した死体となっていたのだ。しかも招待客達は寝ている間に鍵付の仮面を取り付けられているという怪奇。

東京郊外にして10年に一度の大雪のため脱出不可能な真冬の山荘と化した邸内で行ったこの奇々怪々な事件の真相とはいかなるものだったか。


tag : 本格 新本格 綾辻行人 館シリーズ

ダブルミステリ/芦辺拓/東京創元社

2つのタイトルを持つ作品が表と裏に配置。複数のプロットが平行して展開していく作品は数多いが、このように明確に作品タイトルをわけたものが表裏に配置され、そしてだからこそのトリック効果を生み出しているとは恐るべき作品

本格ミステリの新境地を切り開いているといっても過言ではない。

表は「月琴亭の殺人」という表題であり、お馴染みの森江春策が冒頭から登場するオーソドックスとも言える孤立した館もの。
不思議な手紙につられて森江弁護士をはじめとする人々が館に招かれ、そこに彼らから裁判等で恨みを買っている裁判官も来ているという展開。

裏は「ノンシリアル・キラー」という表題であり、表の半分ほどの分量となっている。ブログ形式で当然一人称。元恋人の死から電車内での怪死事件から不思議な事実が判明していくというサスペンス。

個人的理由もあって、袋とじの解決編ではニヤリとせずにはいられなかったことを記しておこう。


楽譜と旅する男/芦辺拓/光文社

楽譜を巡る短編集。その楽譜と旅する男の神秘的な設定、そしてそれまでの事件を踏まえた上での最後の事件での談話が楽しい。

収録作品は物悲しい「曽祖叔母オパールの物語」、天高い「ザルツブルクの自動風琴」、幻想の高みへ「城塞の亡霊」、 現実の戦慄「三重十字の旗のもとに」、白昼の夢「西太后のためのオペラ」、ラストに相応しい心地よさ「悲喜劇ならばディオラマ座」。

神秘と幻想、そして悲しさも混ざる現実、これらが作品ごとに比率を全く大きく変えつつ全てが違うテイストになりつつも、楽譜と音楽という共通テーマで成立する美しい統一に満ちた作品集といえよう


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