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はじめに

このブログでは、戦前の探偵小説、戦後の本格推理小説、平成の新本格ミステリ、欧米黄金時代(戦前)の本格ミステリを中心した、各種小説作品についての感想を記していきます。

基本的には左側のバーにある「カテゴリ」から作家名を選択すれば、その作家の作品の感想記事を読むことが出来る構成にしています。

なお戦前探偵小説作家の中でも、江戸川乱歩と甲賀三郎作品については、別途専用のホームページを作成しており、そちらに小説の感想も記していますので、そちらにもお立ち寄りいただければと思います。

江戸川乱歩:乱歩の世界 | 甲賀三郎:甲賀三郎の世界


また歴史物の書物についての感想等は以下の専用ページに記しています。

古代史の夢 | 中世史関連 | 近現代書の所見



旧読書記録は「乱歩の世界」内の1コンテンツとして設けていましたが、既に殆どの記事は、このブログまたは上記のいずれかに記載を転記済となっています。

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獏鸚/海野十三/創元推理文庫

日下三蔵編の「名探偵帆村荘六の事件簿」作品集。
収録作品は「麻雀殺人事件」/「省線電車の射撃手」/「ネオン横丁殺人事件」/「振動魔」/「爬虫館事件」/「赤外線男」/「点眼器殺人事件」/「俘囚」/「人間灰」/「獏鸚」

底本となった21世紀初頭のちくま文庫版も読了しているため、約15年ぶりの再読になる。
その時の感想記事はこちらに残している

バリエーションに富んでいるが、やはりこの作者のものはSFや怪奇要素が強い作品の方が面白い。「振動魔」/「爬虫館事件」/「赤外線男」「俘囚」/「人間灰」 がそれぞれ細部まで効果的で何度読んでも驚かせる。探偵小説としては「爬虫館事件」が優れているが、怪奇科学小説としては「俘囚」が群を抜いているといえる。

他にもアホすぎて笑うしか無い脱力系探偵小説「点眼器殺人事件」、最新の時代をトリックに使った表題作「獏鸚」なども見物。


幽霊塔/江戸川乱歩、カラー口絵宮崎駿/岩波書店

幽霊塔はもう5回目くらいだとは思うが、この本はカバーだけではない。
冒頭16ページにも及ぶとても細かいカラー漫画。それが宮崎駿と幽霊塔との出会い、
そしてその元になった黒岩涙香版、さらには原作「灰色の女」に至るまで。
「カリオストロの城」を作る切っ掛けとなった「幽霊塔」というばかりではない。
それは宮崎駿の原点とも言える貴重な漫画となっているのだ。そして幽霊塔の冒頭の出会いの絵コンテまで。

さて、肝心の幽霊塔の部分には挿絵が挟まれていないのは少々残念だが、さすがに読み過ぎて覚えているので、
「幽霊塔」本編はサラッと読んだ。地下の迷路部分が意外に短い点、法が全く役に立ってない点、森村探偵の顛末など
もう少し何とかして欲しい点はあるにせよ、やはりやはり何度読んでも探偵趣味に飛んだ面白い通俗冒険活劇だ。

Dの殺人事件、まことに恐ろしきは/歌野晶午/角川書店

江戸川乱歩の小説を現在風にオマージュした歌野晶午の短編集ということなのだろう。
どうにも味付けがおかしな方向へ行ってる点も気になる作品があるが、いくつかは上手くいっている。

「椅子? 人間!」は乱歩「人間椅子」に対する歌野の回答。人間椅子の活用という意味ではオマージュ度は高いが、「人間椅子」に対してはオマージュ度はとても低いと言える。恨みつらみの結果、女流作家に仕掛けたおそるべき罠。
これは結末は見せる必要はなかったのではないか。

「スマホと旅する男」は乱歩「押絵と旅する男」に対するオマージュ度は最低レベルと言ってもいい。何もわかっていないということはないだろうから、わざとなのだろうが、どうにも不快なのは、私の性分なのかもしれないが。スマホに人工知能を植え付け、それと旅している男と思いきや、それすらも達成できていない。
なぜ次元が異ならせたのか理解に苦しむ設定であった。異次元的な効果だけ借りようとしても全く詮無いことでナンセンスだ。 そもそも本作品集でもっとも最悪なのが、この手のIT技術系の作品としてしまうのは、興ざめというしかない。
「蟲」モチーフ作品ならば、良作と思えただけに残念なところか。

「Dの殺人事件、まことに恐ろしきは」は「D坂の殺人事件」に対するオマージュが良い感じに溶け込んでいる作品。
少年を相棒にして、その少年が事件の軸となるところが効果的となっているのだが、下手な推理は身を破滅させるということだ。

「「お勢登場」を読んだ男」はオマージュ度がもっとも高い作品とも言え、下手な小細工も存在せず、乱歩ファンとしてはもっとも楽しめた作品といえる。
そのまま現在の「お勢登場」すぎてニヤリとしてしまうが、発見の段がなかったのは痛恨の誤りだろう。あれがないと「お勢登場」とは言えない。

「赤い部屋はいかにリフォームされたか?」は舞台で「赤い部屋」を演じて、演じて、よもやの展開になる作品。
読ませる作品ではあるが、まるでコントのような作品になっている。もっともあれがないと締まらないのも確か。

「陰獣幻戯」は「陰獣」+「化人幻戯」なのだろうが、設定自体の安っぽさはあるものの、印象づける伏線ゆえに仕方ないのか。 それゆえに寒川と大江春泥どちらも存在しないDMの主の正体が暴露するところから終末までは一気呵成だ。

「人でなしの恋からはじまる物語」は、まさにタイトルの通りなのだが、これも「人でなしの恋」の部分があまりにも力業で どうにもいただけない。現在のリアリティになっていない。どういうことだよ、とその人でなしの恋になってしまう闇に興味が向くではないか。
後半は灰色の中の微笑み、悪くはないが、強烈な物語を期待している中では落ち着いた終わり方。まぁ悪くはないが、ともう一度。

甲賀三郎探偵小説選Ⅱ/甲賀三郎/論創社

デビュー作から、気早の惣太シリーズも全て収録し、戦時中の作品で甲賀最後の連載長編と目される「朔風」も収録するなど 甲賀の本流というよりは異色作に偏り風味ではあるがバラエティに飛んだラインナップとなっているのが甲賀三郎探偵小説選Ⅱだ。

冒頭に収録はデビュー作でもある「真珠塔の秘密」「カナリヤの秘密」は甲賀が生み出した最初の名探偵、橋本敏の作品集となっている。
ホームズ式のフォーマットを踏襲したかのような作品で、「カナリヤの秘密」においては後々まで甲賀の代名詞ともなる理化学トリックの萌芽が見て取れよう。

気早の惣太シリーズは、全編収録。愛すべきまでに率直でわかりやすいキャラクターの気早の惣太である。泥棒でありながら全く憎むことができない。ステキなキャラである。
甲賀三郎の生み出したるユーモア物としては最高のシリーズである。惣太の活躍は笑いなしでは見てられないだろう。そして時にはユーモアからの感動もよいものだ。

「銀の煙草入れ」「都会の一隅で」「池畔の謎」はサンデー毎日、週刊朝日といった週刊誌に載ったもの。「都会の一隅で」はわかりやすい愉快な驚きを伴った爽快感があるのに比べて、「銀の煙草入れ」と「池畔の謎」は怪奇犯罪小説といった趣だが、一寸中途半端な感は否めない。

「暗黒街の紳士」「変装の女探偵」は義賊怪盗ものであり、甲賀の得意とする分野でもあるだけに面白く読める作品となっている。

「ビルマの九官鳥」は大東亜戦直前の英領ビルマを舞台にした父を探し求める作品。少年物だけに少年の活躍譚となっており、 異国の描き方もなかなか引き込まれる。登場人物達もバイアスの支配はあるにせよ魅力的であり、冒険といった壮大さを感じ取れるだろう。

「ビルマの九官鳥」と「朔風」の繋ぎがまた素晴らしい。これは配列の妙なのだが、その今振り返れば物悲しいのだろうが、当時の勇猛果敢な雰囲気が伝わってくるかのようである繋ぎである。

「朔風」は戦中掲載作品でありながら連続殺人が描かれる探偵小説。冒頭からして洋館に見知らぬ謎の外国人女性の死体が横たわるという不可思議な入りとなっているのだから驚きだ。
途中、探偵役となる主人公もハッキリせぬほど、小さな事件や謎が各所で怒ったりしてごった煮状態ともなるが、当時の日本本土の隅々まで描かれる終わり方は実に探偵小説的であった。本作の収録はなかなか良い試みだったと思う。

遺稿の「街にある港」は読めるだけでもめっけものというしかあるまい。

甲賀三郎の次女の深草淑子さんのエッセイ「父・甲賀三郎の思い出」は、甲賀没後72年にして、あまりにも貴重な証言。
この収録は本当に価値があるだけに本当にありがたい。特に甲賀の最期の様子は初めて知ることが出来たので、じっくりじっくり読ませて頂いた。あるいは最期まで悲壮な現実よりも探偵小説のことを考えていたのだろうか。

浜田知明氏の解題もさすがというしかない。知りたい情報に充ち満ちているので、いっそうこの甲賀三郎探偵小説選Ⅱを丸ごと楽しめること間違いなしなのだ。

テーマ : 本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

tag : 甲賀三郎 探偵小説 論創ミステリ叢書

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