はじめに

このブログでは、戦前の探偵小説、戦後の本格推理小説、平成の新本格ミステリ、欧米黄金時代(戦前)の本格ミステリを中心した、各種小説作品についての感想を記していきます。

基本的には左側のバーにある「カテゴリ」から作家名を選択すれば、その作家の作品の感想記事を読むことが出来る構成にしています。

なお戦前探偵小説作家の中でも、江戸川乱歩と甲賀三郎作品については、別途専用のホームページを作成しており、そちらに小説の感想も記していますので、そちらにもお立ち寄りいただければと思います。

江戸川乱歩:乱歩の世界 | 甲賀三郎:甲賀三郎の世界


また歴史物の書物についての感想等は以下の専用ページに記しています。

古代史の夢 | 中世史関連 | 近現代書の所見



旧読書記録は「乱歩の世界」内の1コンテンツとして設けていましたが、既に殆どの記事は、このブログまたは上記のいずれかに記載を転記済となっています。

江戸川乱歩に愛をこめて/ミステリー文学資料館編/光文社文庫

江戸川乱歩に関わるパスティーシュを集めたアンソロジー。半分以上の作品は再読となるが、時を隔てているので全て読ませていただいた。
以下に挙げる作品が収録されている。それぞれほんの寸評と共にリストアップする。
講談・江戸川乱歩一代記(芦辺拓
21世紀になって間もなくぐらいの頃合いだったと思うが、講談師旭堂南湖のために書き下ろされたのが本作。 意外や意外も何はともあれ、神田伯龍に二十面相と来るのだから読んでも痛快そのものと言える作品となっている。

無闇坂(森真沙子
神隠しにあったかのように友人は消え失せた。そこに絡むという無闇坂は東京開発に伴い既に無いが、そのかつて無闇坂の先にあったという方城寺で起きた不可思議な惨劇、 その記録を残したのが平井太郎、つまり江戸川乱歩だというのだ。あえて団子坂やD坂を連想させる乱歩を登場させることで、物語に効果的な奇怪さを加味する作品と言えるだろう。

新・D坂の殺人事件(恩田陸
現代の東京渋谷界隈は黒山の人だかりである。当然多数の目という目があらゆる方向に向いているといってもいい。しかしそんな中、死体がドサッと倒れ込む。誰も正確に見たはずの死体が湧いて出た瞬間を覚えていない。人間の曖昧性を説く本事件は現代の「D坂の殺人事件」だと、町の廻遊者二人はこの事件について論じ合うといったもの。極めて半端なようでいて読後感は決して半端ではないという不思議な読後感を味わえるだろう。

屋根裏の散歩者(有栖川有栖
著者お馴染みの火村探偵物。タイトルが乱歩の作品そのままという本作。屋根裏を散歩すると言う点も全くその通り。これこそ現代版屋根裏の散歩者といいたいところだが、やはりアパートの屋根裏だ。犯人当ては全く推理小説としては適切とは言い難いものだが、屋根裏の散歩者という意味からすれば至極納得いく解決と言えるのだから面白い。

屍を(江戸川乱歩/小酒井不木
小酒井不木が乱歩との合作名義ということで出した掌編。 死体安置所に若い女の死体を探りにくるという如何に変態的なものだが、実際はある蒐集狂の目的があるという安心させるようなちょっとした拍子抜け感を味わえる作品。

悪魔のトリル(高橋克彦
衛生博覧会を取り上げた本作品は不思議な幻想的な雰囲気に包まれた作品となっている。かつて見た衛生博覧会の見とれるほど美しい展覧物が実際はバラバラ遺体だったというのだ。しかもそれが愛に満ちたものだというからおぞましい。乱歩も取り上げた衛生博覧会についての実情もわかる一篇となっている。

死聴率(島田荘司
TV業界が怪しげな集計方法を採っている視聴率だけに左右されるというのは今も昔も変わらないらしい。 本作品は「目羅博士」が仕掛けた不思議な犯罪と同じような人の行動原理を遠隔操作する恐るべき犯罪譚となっている。

怪人明智文代(大槻ケンヂ
明智小五郎の愛妻と言えば文代さんである。その文代が乱歩に宛てた手紙を発見した作者だったが、 そこに書かれていたのは怪人明智文代の誕生譚とも言えるものだったというコメディ調で楽しくも作者の愛が感じられる作品。

東京鐵道ホテル24号室(辻真先)
このタイトルを見れば何を意味するものかよくわかるというものだろう。美しい思い出と言える時期でもないにもかかわらず、回想に出てくる敗戦直後の長野から東京駅、あの紳士の行動には惚れ惚れするではないか。 ニヤリとせざるを得ない演出が心憎い作品。

女王のおしゃぶり(北杜夫
とにかくスペシャルな怪盗ジバコ、作者のシリーズキャラクターとなっているのだが、「女王のおしゃぶり」なる珍品を狙ってきた。対するは我らが明智小五郎だ。ユーモア味だけで構成されたような本作だけに笑えることは間違いないだろう。

小説・江戸川乱歩の館(鈴木幸夫
戦後の破天荒とも言える人付き合いの良い乱歩を描いた小説作品。これはこれで興味深い。

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tag : 芦辺拓 森真沙子 恩田陸 有栖川有栖 小酒井不木 高橋克彦 島田荘司 大槻ケンヂ 北杜夫 鈴木幸夫

数奇にして模型/森博嗣/講談社文庫

西之園萌絵と犀川先生のシリーズ第9作。

大学の構内で発生した密室殺人事件。その容疑者と見なされた男が、模型交換のイベント会場から発見されるに及ぶのだが、
そこで男は大けがを負った上に、同じ部屋には首無し死体が転がっていた。しかもそこも密室状態だったのだ。
西之園萌絵と犀川先生が共に事件の渦中に飛び込むことになるこの事件の真相とは?

というような展開。
まさにタイトル通りに「数奇にして模型」という事件。
常識や規定観念に意味はなく、それを基に構築された論理性は理不尽なまでに否定され、
ホワイダニットは常識外れの異端の論理、西之園萌絵や読者の常識的な論理思考は翻弄され続けることになるのだ。

奇妙で不気味な違和感を感じさせながらも、一気に読み進めたくなるような作品となっており、その割に読後感もまた不可思議。
真の真相を理解するためには、更に更に深く読む必要があるのかもしれない。そういう意味で読み応えのある作品と言えるだろう。


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有栖川有栖の鉄道ミステリー旅/有栖川有栖/光文社文庫

何のことはない。ミステリー小説でもなければミステリー評論でもない。
旅路に様々な鉄道に乗ることが有栖川有栖の趣味ということで、その鉄ちゃんぶりを披露したエッセイとなっている。

鉄道ミステリーについて述べた章もあるにはあるが、あくまで本題は日本全国の鉄道旅、その素晴らしさを説くといったもの。

私も自動車よりは鉄道の方が性に合っている。移動しながら寝るか読書するかを同時に出来る鉄道は非常に便利だからだ。
自動車ではそうはいかない。むしろ運転に疲れるのがオチであり、運転役でなくても本を読むと酔って気分が悪くなるタチである。
決して趣味というわけではないが、たまに妙なルートで無理矢理乗ったことがない電車や久しぶりの電車に乗りたくなるときもあるので、少しは有栖川有栖の感慨にも共感できるというものか。

とにかくこの本は、ミステリファン以外は買わないとは思うが、全くミステリではないので注意。

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The Book(ジョジョの奇妙な冒険第4部外伝)/乙一/集英社

実に4年以上放置していた本をようやく読んだ。
最近他のノベライズ版などが登場していたことによって、本を存在を思い出したのだ。

ジョジョの奇妙な冒険第4部の外伝作品である。
「The Book」というのは主人公のスタンドの名前。終盤にようやく命名されることになったが、まさに小説版に相応しい能力となっている。
一端を記せば、主人公の全ての記憶が私小説のように記録されるというものであり、 その能力ゆえか、主人公は能力に気づく前も、孤児院で育った幼児期から驚異的な記憶力を誇っていた。

4部の外伝というだけあり、東方仗助、広瀬康一、虹村億泰、岸辺露伴などの主要キャラはそろい踏みでそれぞれ活躍をしてくれる。 特に戦闘シーンの描写を含めて億泰の活躍ぶりは期待以上と言ってもいいだろう。
むろんキャラの特性を生かした描写なので、それぞれのキャラに対して違和感もほとんど感じることは無かった。
プロットはジョジョの奇妙な冒険らしい、読者にも十分に感情移入可能な現実と非現実の狭間のホラー、奇妙な怪奇が因縁となっており、 広瀬康一と岸辺露伴が血まみれの猫を発見するところから動き出す。

作者のジョジョ原作愛に満ちた小ネタなども楽しく、ジョジョファンを十分楽しませてくれる作品となっている。


一度記事が消えたのでかなり簡略化した内容になってしまったが、とにかくジョジョ4部ファンなら読んで損がない作品なので、お勧めしたい。


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